犬のアトピー性皮膚炎の症状と治療法

犬のアトピー性皮膚炎はどう治す?

犬は皮膚トラブルが多い動物とあって、発疹や炎症で痒がっている愛犬を見ていたたまれない気持ちになったことがある飼い主さんも多いのではないでしょうか。

そんな皮膚トラブルの中でもやっかいなのがアトピー性皮膚炎。「アトピー性皮膚炎って人間のものじゃないの?」と感じるかもしれませんが、犬の発症も多い病気なのです。

私自身皮膚が弱い犬種を何匹か飼っているためアトピー性皮膚炎を経験。痒そうにしている愛犬を見るのは辛いものです。

愛犬がアトピー性皮膚炎になってしまったらどうすればいいのか? どういった症状や原因が考えられるのか? またその対処法や治療法などを詳しく紹介していきたいと思います。

アトピー性皮膚炎が多い犬種は?

アトピー性皮膚炎は様々な要因によって引き起こされる症状であるため、どんな犬種においても発症する可能性があります。

しかし要因の中には遺伝的なものも含まれており、アトピー性皮膚炎を起こしやすい犬種というものが存在します。

一般的にアトピー性皮膚炎になりやすいとされる犬種は…

  • ラブラドールレトリーバー
  • ゴールデンレトリーバー
  • 柴犬
  • シーズー
  • フレンチブルドッグ
  • パグ
  • ボストン・テリア
  • シェットランド・シープドッグ

比較的色々な犬種でみられるアトピー性皮膚炎ですが、フレンチブルドッグやシーズー、パグなどの短頭種は特に要注意。

また、ゴールデンレトリーバーやラブラドールレトリーバーも比較的好発する犬種。こういった犬種を飼う、もしくは飼っている人はアトピー性皮膚炎になりやすいことを心に留めておくべきでしょう。

アトピー性皮膚炎の特徴と症状

ではアトピー性皮膚炎とはどういったもので、どういう症状を示すのか具体的に見ていきましょう。

アトピー性皮膚炎の主な症状として挙げられるのは以下のもの。

  • かゆみ
  • 皮膚の炎症
  • 発疹
  • 鱗屑(皮膚の角質層が剥がれる)
  • 紅斑
  • 脱毛

特に顕著なのは発疹などの炎症で、悪化すると脱毛が見られるようになります。強い痒みにより年がら年中体を掻くようになり、それがさらなる悪化をもたらす悪循環に陥ります。

アトピー性皮膚炎の診断基準

犬のアトピー性皮膚炎は診断に際し一定の基準があります。

  • 生後3歳までに発症
  • 室内飼い
  • 前脚の病変
  • 耳介に病変がある
  • 腰や背中に病変がない
  • 初期は炎症が発生しないが痒みがある

アトピー性皮膚炎というと仔犬の頃から発生しそうな印象を受けますが、2歳くらいになって徐々に現れだすことも珍しくありません。

鼠径部(股関節周辺)やわき、前脚の指の間などに好発し、指の間を噛んだり舐めたりすることが多くなります。比較的若い段階でこういった場所に発疹が出た場合はアトピー性皮膚炎を疑った方がいいでしょう。

アトピー性皮膚炎の原因

そもそも犬のアトピー性皮膚炎の原因や要因はどういったものなのか?それを掴むことができれば対処や治療に活かせそうですよね。

しかし、原因や要因に関しては、ある程度特定はできているが完全に解明されたわけではないというのが実情。

前述したように発症しやすい犬種が確認されていることから遺伝的な要因がある可能性が高いとみられ、それ以外にもストレスや気温、湿度、皮膚バリア機能の異常など様々な要因が背景にあるとされます。

中でもアレルギー反応による免疫機能の過剰反応が原因として取りざたされており、生活圏にある何らかのアレルゲンによって発症しやすくなると考えられています。室内飼いの犬が発症しやすいとされるのはそのため。

様々な要因が重なって起きている可能性が高く、アレルゲンひとつとっても個体によって千差万別。原因を特定するのは難しいと言わざるを得ません。

犬のアトピー性皮膚炎の治療法

では愛犬がアトピー性皮膚炎になってしまった場合どういった治療が行われるのでしょうか。実は「治療」といっても根治させることは困難で、対症療法が主な治療法となります。

まめなシャンプー

野生動物はシャンプーなど行わないことから、「犬を洗う必要はない」と考えている飼い主さんもいると思います。それはある意味で真理ではあるのですが、アトピー性皮膚炎を患う犬の場合はまめにシャンプーを行うと良化するケースが見られます。

その理由は、抗菌作用に優れた成分や皮膚に付着したアレルゲンを除去しつつ、乾燥を防ぐ保湿効果により痒みを抑えることが期待できるから。

ただし、とにかく洗えばいいというものではありません。抗菌作用や保湿作用があり、かつ低刺激の薬用シャンプーを使用しなければ逆効果になってしまう恐れもある点に注意。

洗う頻度は犬の状態によって様々。一般的には1ヶ月に1、2回で十分とされますが、アトピー性皮膚炎など皮膚にトラブルを抱えている場合は1~2週間に1度は洗ってあげたいところ。

食事療法

アトピー性皮膚炎を引き起こすアレルゲンと一口に言ってもその内容は様々。ハウスダストやダニが原因の場合もあれば、ご飯の中に含まれる特定の物質が原因の場合もあります。

代表的なものは小麦や牛肉、大豆、とうもろこしなど。

こういったものがアレルギーの原因になっている場合は、アレルゲンをカットした食事を与えることでアトピー性皮膚が改善することも。

内服薬:プレドニゾロン(プレドニンなど)

アトピー性皮膚炎の治療として最もポピュラーなのはステロイド薬である「プレドニゾロン」の服用。免疫抑制作用や抗炎症作用、抗アレルギー作用がありアトピー性皮膚炎に対し高い効果を発揮します。

一般的に動物病院で処方されるのは1錠5mgのもの。体重や症状に応じて使用量は変わり、比較的軽度のアトピー性皮膚炎であれば半錠から4分の1錠くらいの使用量になることが多い。

ステロイドは非常に効果的である反面、副腎機能の低下や食欲促進、肝臓への負担などの副作用リスクが存在するため、できる限り量は減らしたいところ。

小型犬であれば1日4分の1錠を1日おきに投与するくらいであれば副作用リスクもかなり抑えられるでしょう。

ちなみに薬価は安価で、半錠や4分の1錠の使用であれば1ヶ月数百円程度と経済的。

内服薬:シクロスポリン

免疫の働きを抑制し痒みを推させる効果があるのがアトピカなどに使用される成分「シクロスポリン」。

プレドニゾロンなどのステロイドと違いアトピー性皮膚炎に特化し、全身に及ぶ副作用が少ないのがポイント。副作用として嘔吐や下痢が見られることもありますが、短期間で収束する場合がほとんど。

欠点は価格が高いこと。

そのため、少量のプレドニゾロンで効果があるならステロイドで十分という見方も。ただしプレドニゾロンの量が多い場合は安全性を考えシクロスポリンなど別の選択を考えたいところ。

内服薬:オクラシチニブ(アポキルなど)

アトピー性皮膚炎の治療はステロイドを使うのが一般的でしたが、「アポキル」などオクラシチニブという成分を用いた治療薬が登場したことによって状況は一変しました。

従来のステロイドは高い効果を示す一方で副作用の懸念も強いものでした。そのためステロイドの使用に二の足を踏む飼い主さんも多いのではないでしょうか。

しかしアポキルに代表されるオクラシチニブ内服薬は“痒みを抑える”という点に特化しているため、副作用を心配する必要がほとんどないのが特徴。

「痒みを抑えるだけでアトピー性皮膚の対策になるの?」と感じる人もいるかもしれません。結論から言えば掻かなければアトピー性皮膚炎は改善します

アトピー性皮膚炎の最大の特徴は「痒み」。軽度な炎症や発疹でも掻くことによって炎症が悪化、さらに痒くなるという悪循環を引き起こし重度の炎症に発展していくのです。

ステロイドは抗炎症作用や免疫抑制作用によって痒みや炎症を抑えますが、アポキルは痒みを脳内に伝える物質からの伝達を阻害する作用によって痒みを感じさせなくする薬。ただただ単純に痒みを認識させなくするだけのものなのです。

しかし、単純な作用ながら強烈な痒みと“掻く”ことによって悪化していくアトピー性皮膚炎には絶大ない効果を発揮します。一方で作用が限定されることから体への負担や副作用はほとんどないという夢の薬。

唯一のデメリットは価格が高いという点。動物病院で処方してもらうなら1ヶ月で5,000~10,000円の出費は覚悟しておく必要があるでしょう。可愛い愛犬のためと考えれば十分許容範囲ですが。

ただ、個人輸入によって海外のアポキル錠を購入すれば出費をぐっと抑えることができます。もちろん正規品ですので品質や信頼性も問題ありません。

愛犬がアトピー性皮膚炎になったら

愛犬が粥に見苦しんでいる姿というのは見ていて非常に辛いものがあります。特にアトピー性皮膚炎の痒みは非常に強いため「どうにかしてあげたい」と考えるのが自然なのではないでしょうか。

アトピー性皮膚炎による炎症は酷くなると全身に広がり脱毛を引き起こす場合も。可能であればこうなる前に対策しておきたいところ。

まずは最も負担が少ないであろう食事療法やまめなシャンプー。それでも効果が見られない場合は薬物療法も視野に入れるべき。動物病院にいけばどういった治療が適切かアドバイスをしてもらえるでしょう。

かつてはステロイドくらいしか選択肢がなかった薬物療法も、より体への負担が少ないシクロスポリン(アトピカ)やオクラシチニブ(アポキル)が登場。これにより安心して投薬できるようになりました。

特にオクラシチニブを用いたアポキルは免疫を抑制することなく痒みを抑えることに特化していることから、副作用の心配はほとんどなく最も負担が少ない治療薬といえます。

愛犬のアトピー性皮膚炎が軽減・改善するかどうかは飼い主しだい。愛犬にとって最良の選択をしてあげたいところです。

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