愛犬に歯周病が疑われる場合の対処法

犬が歯周病になった際の治療法

かねてより歯を失ってしまう原因となる病として広く知られていた歯周病ですが、近年はアルツハイマー病や心疾患、糖尿病など様々な病気を引き起こす要因になるということが分かってきました。

そんな恐ろしい歯周病は人間だけのものではありません。犬にとっても寿命を縮める怖い病気であることに違いはないのです。

しかし愛犬の歯周病を気にかけている飼い主は必ずしも多いわけではなく、また当然ながら犬は自ら歯磨きができないばかりか歯医者に行くこともありません。つまり人間に比べ歯周病になりやすいといっても過言ではないのです。

とはいえ近年のペットブームにより犬の歯周病を気にする飼い主が増えてきたのも確か。愛犬の健康を守るために歯周病に対する正しい知識を身に付けておきましょう。

    目次
  1. 歯周病がもたらす様々な病気
  2. 犬が歯周病になってしまう原因
  3. 犬の歯周病の症状は?
  4. 歯周病の治療法
  5. 愛犬の歯周病を予防するために
  6. 犬の歯周病のまとめ

歯周病がもたらす様々な病気

犬の歯周病がもたらす病気

歯周病とは簡単に言ってしまえば歯茎の病気の総称です。

歯茎のごく表面が炎症を起こしている状態を「歯肉炎」、炎症が広がり歯を支える歯槽骨が破壊されるようになる「歯周炎(歯槽膿漏)」と呼び、それら歯周に起きる病をひっくるめて「歯周病」としています。

歯周病は人間が歯を失う原因として虫歯を抑え第一位であるのと同様に、犬が歯を失う原因として真っ先に歯周病が挙げられます。しかし歯周病が恐ろしいのは歯を失ってしまうことに留まりません。

一見関係なさそうな様々な病の要因になることが分かってきたのです。そしてそのリスクは人間も犬も同様と見られます。

歯周病が悪影響を及ぼす主なものは以下の通り。

  • 心疾患
  • 糖尿病
  • 腎臓病
  • 骨粗鬆症
  • 顎骨折

なぜ口の中の歯周病がこれらの病気を引き起こすのか? それは歯周病原性細菌が血液に乗って臓器などに悪影響を与えるからです。

中でも怖いのが糖尿病。歯周病に関する細菌や炎症性サイトカインが全身に循環することにより血糖値を下げるインスリンの働きを弱めるため血糖値のコントロールが困難になり、結果糖尿病になってしまうのです。

しかもその糖尿病が悪化すると全身の免疫機能が低下し歯周病菌により感染しやすくなり歯周病が悪化。それがインスリンの働きを…というように悪循環に陥ってしまいます。

糖尿病は血管に重大なダメージを与え様々な合併症を引き起こす病気。そんなリスクから愛犬を守るためにも口腔ケアが重要になってくるのです。

犬が歯周病になってしまう原因

歯を失う原因になってしまうばかりか全身に様々な悪影響をもたらす犬の歯周病。その原因は歯垢と歯石にあります。

犬の口の中には様々な菌が多量に存在しています。その菌が増殖しネバネバの状態になったものが「歯垢(プラーク)」です。食事の後に口に残った食べかすがあるとその増殖は一気に進みます。

形成された歯垢は歯と歯肉に境目に溜まりやすく、また歯に貼り付く性質があるため唾液だけで洗い流すことはできません。犬は自ら歯磨きを行うことはないため、放置していればどんどん溜まっていってしまうのです。

細菌の塊である歯垢は歯周病の原因になるものですが、特に厄介なのは唾液中のカルシウムやリンといったミネラルにより硬い「歯石」になってしまうこと。歯を磨くことで除去できる歯垢も、歯石に変化してしまうと歯磨きで取り除くことが困難になるのです。

歯石とは表面がザラザラかつ多孔質の軽石のようなもの。細菌や歯垢が非常に付着しやすく、それがまた歯石となって徐々に積み上がっていきます。

歯と歯肉の境目…いわゆる「歯周ポケット」に溜まりやすい歯垢が歯石に変化し、そこに細菌や歯垢が溜まり常に毒素を放出し続ける…そうして犬の歯茎は炎症を起こし、悪化することで歯槽骨を破壊してしまう歯周炎に進行してしまうのです。

犬の歯周病の症状は?

犬の歯周病の症状

犬が歯周病になってしまった際の主な症状も見てみましょう。

  • 口臭が強くなる
  • 歯肉が赤く腫れている
  • 歯がぐらついている
  • 出血が見られる

人間であれば歯周病の症状である歯茎の痛みや違和感、噛みにくさなどを訴えることができますが、犬の場合は飼い主が目や鼻を用い判断する必要があり、その判断材料として挙げられるのが上記になります。

愛犬の口腔ケアを積極的に行っている人であれば歯肉や歯の色、出血や腫れに気付くことができるでしょう。しかし口腔ケアを行っていない場合は愛犬の口臭によって気付くケースが多いと思います。

臭いの質に関しては表現が難しいところですが、あえていうなら「ドブのような臭い」。また歯周病が進むとちょっとしたことで出血することが多くなるため鉄のような臭いが混じることも。

重度になってくると様々な病気の要因になったり歯が抜け落ちたりしてしまうため、可能であれば毎日愛犬のブラッシングなどを行い、同時に歯や歯茎の状態を確認したいところです。

歯周病の治療法

愛犬に歯周病が疑われる場合、どういった対処方や治療法があるのか?

基本は歯周病の原因である歯垢や歯石を徹底的に除去することにあります。なぜなら歯垢や歯石の除去こそが最も有効的な治療法だからです。そしてその多くは全身麻酔を使用して行われます。

犬に限らず全身麻酔にはリスクがあるため可能であれば避けたいところ。しかし歯周ポケット内の歯石の除去は痛みを伴うことも多いため麻酔を行わないと犬は暴れてしまい危険なのです。

暴れることによって歯石を除去するスケーラーという器具が歯茎を傷つけてしまう恐れがありますし、力づくで暴れるのを抑えようとすると犬が骨折したり体を痛めてしまったりする恐れもあるのです。そのリスクを無くすためにも全身麻酔は必須といえるでしょう。

全身麻酔によって犬が暴れたり抵抗したりしない状況において歯周ポケットに溜まった歯石や歯垢を徹底的に除去する。これが歯周病治療の基本中の基本になります。

糖尿病がある場合は並行して治療する場合も

犬の歯周病の治療では歯垢や歯石の除去が行われますが、糖尿病のように相互に影響を与えあう疾患がある場合は並行して治療を行うのが理想的。

歯周病は糖尿病の増悪因子であり、また糖尿病は歯周病の増悪因子でもあるため、歯石をしっかりと除去したとしても糖尿病を放置していると再び歯周病になりやすくなってしまうのです。

糖尿病の有無が分からない場合は、歯周病の治療に際し糖尿病の検査も行っておいた方がいいでしょう。

愛犬の歯周病を予防するために

愛犬の歯周病を予防するには

愛犬が歯周病になってしまった以上はしっかりと治療行う必要があるものの、できれば歯周病になる前に予防しておきたいところ。そうすることで全身麻酔などのリスクや出費を抑えられますしね。

歯周病の予防は一にも二にも口腔ケア。毎日歯磨きを行うことで歯垢の除去が期待できますし、同時に歯肉のチェックも行えるため一石二鳥。

ただ、成犬になってから歯磨きを始めようとすると嫌がる犬も多いことでしょう。そういった場合は無理やり歯磨きを行うのではなく、毎日少しずつ慣れさせていくようにしてください。

可能であれば仔犬の頃から習慣づけるのがベスト。

食事はドライフードがおすすめ

毎日の口腔ケアに比べれば微々たる効果ですが、歯垢の付着を抑制するという観点から言えば食事をドライフードにするのもおすすめです。

愛犬が喜ぶからという理由で缶詰など軟らかい食事を与えている飼い主さんも多いと思います。しかし固いドライフードのほうが食べている間に歯にい付着した歯垢を削り取りやすく、また咀嚼回数が多くなることで唾液の分泌量も増えるメリットが。

特定のドッグフードに強いこだわりがあるなど確固たる理由がないようであれば、愛犬の歯の健康のためにもドライフードを選択したほうがいいでしょう。

犬の歯周病のまとめ

歯周病というと歯を失ってしまう病気という印象が強いと思います。しかしこの病の怖いところは歯が抜けてしまうだけに留まらず、心疾患や糖尿病、腎臓病など様々な病気の要因になる点にあります。

犬の場合、仮に歯がすべて抜けてしまったとしても食事面ではそれほど問題にならないものの、歯周病が引き起こす他の病気によって寿命が短くなってしまう可能性は十分考えられるのです。

しかし、犬は歯茎が痛い・違和感があると訴えることはできません。そもそも歯周病は初期の段階では自覚症状が少ないこともあって、飼い主の方がよほど気を付けていないと見落としてしまいます。

その結果飼い主が気付くころにはかなり悪化しているケースも。

歯周病が悪化してしまうと全身麻酔をしたうえでの歯垢や歯石の除去が必要になります。比較的健康な犬の全身麻酔による死亡率は0.1~0.5%程度。一見低いように感じますが数百匹に1匹が死んでいる計算に。

全身麻酔はやはりリスクがあるのです。そして数万円の費用も掛かります。

愛犬の健康を考えた場合、歯周病はできるだけ避けたいところ。そのためにも普段から口腔ケアと歯茎や歯のチェックを欠かさないようにしてください。

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