犬の膿皮症はどう治す?原因と特徴を解説

犬の膿皮症の原因と治療法

「最近愛犬が体を掻いている」「体にポツポツとした発疹が見られる」そう感じた場合は膿皮症を疑った方がいいかもしれません。

膿皮症は犬の皮膚疾患の中でもアトピー性皮膚炎と並び代表的なもののひとつ。皮膚トラブルが起きた場合はまっさきに疑うべきと言っても過言ではありません。

細菌性であるためアトピー性皮膚炎に比べ治療がしやすい特徴があるものの、発症の原因にはアトピー性皮膚炎など他の皮膚疾患が関わることもあり決して油断はできません。

膿皮症の詳しい原因や症状、そして治療法や対処法とは?

    目次
  1. 膿皮症の症状
  2. 膿皮症の原因
  3. 膿皮症の好発部位
  4. 膿皮症になりやすい犬種は?
  5. 犬の膿皮症の治療法は?
  6. 膿皮症の予防法
  7. 犬の膿皮症のまとめ

膿皮症の症状

膿皮症で確認できる症状は以下のようになっています。

  • 紅斑
  • 膿疱
  • 発疹
  • 色素沈着
  • フケ
  • 鱗屑(皮膚の角質層が剥がれる)
  • 痒み
  • 脱毛

膿皮症は初期の段階では毛穴と一致した紅斑や発疹が表れ、次第に膿を持つようになるのが一般的。膿疱が崩壊した後はかさぶたに。一定期間が経過した病巣では環状にかさぶたや鱗屑が付着する表皮小環が見られます。

アトピー性皮膚炎などの疾患を原因とする場合も多いことから、多くの場合は痒みが発生します。

膿皮症の原因

膿皮症の原因は細菌の繁殖にあります。

犬の皮膚には様々な常在菌が存在します。その中には皮膚トラブルの原因となる黄色ブドウ球菌も含まれますが、正常な皮膚であればこれが問題を引き起こすことはありません。

しかし、何らかの原因により皮膚のバリア機能が低下するとブドウ球菌やレンサ球菌が感染。膿皮症を引き起こしてしまいます。

最も多い例としては、アトピー性皮膚炎や脂漏性皮膚炎など他の皮膚疾患を持っている場合。こういった症状が引き金になって膿皮症を発症してしまうケースも。

単純に膿皮症だけであればしっかりと治療することで完治は十分見込めるものの、アトピー性皮膚炎などが引き金になっている場合は再発する可能性が高まります。

膿皮症の好発部位

膿皮症自体は全身どこにでも現れる疾患。軽度であればお腹の一部分のみ、手の先だけということも十分考えられます。

ただ、アトピー性皮膚炎を引き金に発症することも多いため、鼠径部(股関節付近)や腋、手の指間などに多発する傾向に。

毛が少ないお腹や腋などは症状が見えやすいことから発見しやすい一方で、背部や顔など毛が密集している部位は発見が遅れがち。悪化による脱毛ではじめて気づく場合も。

そうならないためにも愛犬の行動の変化には目を光らせておきたいところ。

膿皮症になりやすい犬種は?

遺伝的な要因もあるとみられるアトピー性皮膚炎の場合発症しやすい犬種というものがある程度存在しますが、膿皮症はどの犬種でも見られる病気。

ただし、他の皮膚疾患が原因で発症することも多いことから、アトピー性皮膚炎になりやすい犬種、皮膚が弱いとされる犬種の方が膿皮症になりやすいとみていいでしょう。

具体的な犬種を挙げると…

  • フレンチブルドッグ
  • パグ
  • シーズー
  • ボストン・テリア
  • ラブラドールレトリーバー
  • ゴールデンレトリーバー
  • 柴犬

一般的に皮膚疾患が多い犬種というのはフレンチブルドッグやパグ、シーズーなどの短頭種。アトピー性皮膚炎になりやすい犬種もこれら短頭種や柴犬、ゴールデンレトリーバーなどが挙げられます。

そういったことから上記の犬種は膿皮症になりやすいと見ていいでしょう。

ジャーマンシェパードの膿皮症の要注意

どんな種類の犬でも膿皮症を発症する可能性がありますが、特にかかりやすいのは皮膚が弱い傾向にある犬種に絞られてきます。しかし中には例外が。

ジャーマンシェパードだけは遺伝的に全身性膿皮症になりやすいのです。

他の犬種の膿皮症に比べ悪化しやすく、また完治は困難。根気強い治療が必要になります。ちなみに具体的な発症の原因は分かっていません。

犬の膿皮症の治療法は?

犬の皮膚疾患の中でも特に多い膿皮症。その治療法にはどういったものがあるのか具体的に見ていきます。

抗菌剤や抗生物質の投与

膿皮症の治療は通常「セファレキシン」という抗生物質の投与で行われます。

セファレキシンはブドウ球菌に対し高い効果を発揮するとあって膿皮症の第一選択薬として使用され、用量は体重によって異なるのが特徴。最低でも3週間継続して使用し経過を観察。

ただし、近年抗生物質や抗菌剤が効かない耐性菌が確認されており、セファレキシンなどの抗生物質を投与しても思うような効果が得られない場合も散見されます。

外用薬による治療

セファレキシンなどの内服薬で効果がない場合、もしくは内服薬と並行して行われることがあるのが患部に直接塗布する外用薬での治療。

ゲンタマイシン(製品名:ゲンタシン)が代表的になるでしょうか。

内服薬の場合耐性菌が発生しやすく、一度耐性菌ができてしまうと以後効果を発揮しない場合がほとんどですが、外用薬は耐性菌が作られにくいうえに高濃度の使用により耐性菌にも効果を発揮する可能性が指摘されています。

ただし、カラーを使用するなど何らかの対策をしないと軟膏を舐めとってしまう点に注意。塗りっぱなしは避けましょう。

適切なシャンプーの使用

皮膚を清潔に保ち原因菌であるブドウ球菌の繁殖を抑えるという点で適切なシャンプーの使用やは欠かせません。

膿皮症に対し最も使用されている成分はクロルヘキシジン。同成分とミコナゾールが2%配合されたマセラブシャンプーは膿皮症はもとよりマセラチア皮膚炎や脂漏性皮膚炎にも効果を発揮します。

使用頻度は週2回を目安に。

基礎疾患の治療

膿皮症は皮膚のバリア機能が低下した際にブドウ球菌が感染し発症します。その皮膚バリア機能低下を引き起こすものとして考えられるのがアトピー性皮膚炎など他の皮膚疾患です。

またはコルチゾールが過剰に分泌される「クッシング症候群」、甲状腺ホルモンが不足する「甲状腺機能低下症」が基礎疾患になっている場合も。そういった場合はまずそちらの治療を優先させます。

中でもアトピー性皮膚炎との併発は非常に厄介であるため、ブレドニゾロンなどのステロイドや免疫抑制剤シクロスポリン、痒みを抑えるオクラシチニブなどを用いて治療を行いましょう。

膿皮症の予防法

犬の皮膚疾患として最も多く見られる膿皮症。可能であれば発症自体を抑えたいところですよね。治った後の再発防止や予防法はどういったものが考えられるでしょうか。

アトピー性皮膚炎などの治療

上でも取り上げましたがアトピー性皮膚炎などの皮膚疾患は皮膚のバリア機能を著しく低下させるため膿皮症の原因になるケースが多くなり、加えて併発により治療が難しくなる傾向に。

そのためアトピー性皮膚炎の症状が見られたら膿皮症やマセラチア皮膚炎の併発を予防するためにも早急に治療を行うべきです。

これは膿皮症が改善した後も同様。アトピー性皮膚炎の完治は難しいことから、副作用が少ないオクラシチニブ(製品名:アポキル)やシクロスポリン(製品名:アトピカ)を用いコントロールしたいところ。

皮膚を清潔に保つ

膿皮症の原因である黄色ブドウ球菌などは常在菌…つまり犬はもちろん人間に皮膚などにも当たり前のように存在する菌です。

とはいえ菌の増殖を抑えることで膿皮症の発症を回避することができるのも事実。そのためにはまめにシャンプーを行い皮膚を清潔に保つことが重要。

毛が密集している犬種の場合、皮脂や汚れによって思いのほか短期間で皮膚環境が悪化する場合も。それを避けるためにも定期的なシャンプーを行うようにしてください。

毛を短めにカットする

膿皮症は高温多湿になればなるほど細菌が増殖し発症しやすくなります。そして高温多湿を助長するのが長い毛なのです。

そのため、愛犬の皮膚のことを考えるならある程度の短めにカットしておきたいところです。毛を短くすることで皮膚の異常に気付きやすくなるというメリットも。

犬の膿皮症のまとめ

膿皮症は犬の皮膚疾患の中でもポピュラーなものですが、甘く見ていると愛犬に多大な苦痛を与えることになってしまいます。

膿皮症単体であれば完治する可能性は十分あるものの、近年は耐性菌の登場など治りづらい状況になりつつあるのも事実。これが他の疾患によって引き起こされたものであればなおさらです。

再発するケースも多く、場合によっては一生付き合っていく可能性も。

重要なのは飼い主さんの心がけ。抗菌力に優れるマセラブシャンプーなどを用いまめにシャンプーを行う、高温多湿の状態を避けるなど普段からの対応が膿皮症の発症や再発を防ぐのです。

「最近よく体を掻いている」「毛が束になって抜けている」など異常を感じた場合はなるべく早めに獣医師に相談するようにしてください。

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