愛犬が体を掻いている!その原因とは?

犬が体を掻いているのは病気?

犬が後ろ脚を使って体を掻く仕草、よく目にしますよね。たまにかく程度なら特に問題はありませんが、それが頻繁になると心配になってしまいます。

特に心配なのが特定の部位を頻繁に舐めたり噛んだりする状況。場合によっては掻きすぎて毛が薄くなってしまっているケースも。

犬が痒がっている、体を掻いている場合どういった症状や病気が考えられるのでしょうか? またその対処法とはどういったものなのでしょうか?

厄介な病気が隠れている可能性がある犬の体の痒みについて詳しく解説していきます。

体をかく行動は千差万別

私たち人間の体が痒い場合、手を使って掻くのが一般的。しかし人間のように手を上手に使えず、かつ体が硬い犬は前脚や後ろ脚はもちろん、口で舐めたり噛んだりすることで体を掻きます。時には床や壁を使う場合も。

ただし、舐める行動に関しては必ずしも痒いとは限らない点に注意。毛づくろいであったりストレスが溜まっていたりする場合にも体を舐めることがあるからです。

また、おしっこをした後に陰部を舐めて綺麗にしたり、ヒート(生理)時に経血を舐めとる場合も。体を舐めている場合は「なぜ舐めているのか」を明らかにする必要があります。

犬の痒みを引き起こす病気や原因は?

犬が体を掻く原因や病気

では本題に入ります。愛犬が体を痒がっている場合、どういった原因が考えられるのでしょうか? 中には一生付き合わなければならない病気も存在します。

アトピー性皮膚炎

犬の皮膚炎の中でも比較的多く、かつ完治は難しいのがアトピー性皮膚炎です。皮膚のバリア機能が弱かったり遺伝的な要因を持っている状況において何らかのアレルゲンにより発症すると見られています。

3歳までに発症することが多く、好発部位は指の間や鼠径部(股関節部分)、腹部、腋、耳介など。お腹周辺や前足の指の付け根を舐めたり噛んだりすることが多いのが特徴。

悪化すればするほど痒みは強まり、掻きむしることでさらに悪化するという悪循環に陥ります。

悪化すると炎症部が全身に広がり著しい脱毛が見られることも。完治は難しい病気ですが、しっかりと治療を行うことで苦しみから愛犬を救うことができます。

アトピー性皮膚炎の治療法

アトピー性皮膚炎の治療法としてもっともポピュラーなのはプレドニゾロンというステロイド薬による治療法です。痒みや炎症を抑えることでアトピー性皮膚炎を改善させます。

しかしステロイド薬は副作用への懸念があるため、近年は痒みのみを抑える画期的な治療薬「アポキル錠」が使用されるケースが多くなっています。

ただし、アポキル錠はステロイドに比べ体への負担は大きく減らすことができる反面、値段は高価。病院で処方してもらう場合は1ヶ月5,000~15,000円くらいの出費を覚悟しておく必要があるでしょう。体重が重ければ重いほど高くなります。

膿皮症

犬の皮膚炎でもっともポピュラーなのが膿皮症です。

本来であれば問題を起こすことはない皮膚の常在菌である黄色ブドウ球菌が、皮膚のバリア機能の低下などにより感染し炎症を起こすことで発症します。アトピー性皮膚炎と併発するケースも。

全身どこにでも現れる皮膚疾患ではあるものの、アトピー性皮膚炎と併発することが多いことから、指の間や鼠径部、腋などに特に多く見られます。痒みはかなり強いため膿皮症になると頻繁に掻いたり舐めたりするように。

膿皮症の治療法

膿皮症の治療には一般的にブドウ球菌に対し効果を発揮する「セファレキシン」という抗生物質が使用され、3週間ほど飲み続ける必要があります。

多くはセファレキシンで治癒するものの、近年は耐性菌の出現により同薬が思うような効果を発揮しない場合も。そういった場合はゲンタマイシンなどの外用薬が用いられます。

アレルギー

アトピー性皮膚炎とアレルギーはイコールである部分が多いものの、アトピー性皮膚炎でなくても何らかのアレルギーにより体を痒がる場合があります。代表的なものはハウスダストや花粉、特定の食物など。

強い痒みや発疹、紅斑などを呈する場合も多い。アトピー性皮膚炎や膿皮症と見分けがつかない場合もあります。

しかし飼い主がアレルゲンを特定するのは難しいため、症状がひどい場合はアレルギー検査を行いアレルゲンを特定する場合も。

アレルギーによる痒みの治療法

アレルギーによる痒みによって体をかいてしまう状況を改善するには、アレルゲンを特定したうえでそれを遠ざける必要があります。

ハウスダストが原因であれば家の掃除をこまめにする、何らかの食品がアレルゲンであればそれを食べさせないといった具合。近年増えている犬の花粉症が疑われる場合は昼過ぎや夕方の散歩を避ける、玄関に空気清浄機を置く等。

それでも愛犬が体を掻く・痒がるようであれば、アトピー性皮膚炎同様ステロイドであるプレドニゾロンやアポキル錠での治療が一般的。

ダニ

犬の皮膚に付着するダニも痒みの原因となります。

一口に「ダニ」といってもその種類は様々で、危険な感染症をもたらす恐れがあるマダニから、目視することが難しいほど小さいニキビダニやヒゼンダニなど多くの種類が存在します。

吸血することで最大1cm以上になるマダニであれば見つけやすいものの、1mmに満たないニキビダニやヒゼンダニを発見するのは難しく、膿皮症など他の皮膚炎と間違われやすいという特徴も。

犬の毛穴に潜むニキビダニ、皮膚表面に寄生するヒゼンダニ共に強い痒みがあるため、寄生された犬は頻繁に体を掻くようになります。

ダニによる痒みの治療法

犬から血を吸うことで大きく膨らむマダニであれば必ずしも痒みが伴うわけではないため発見は遅れがち。見つけた時にはパンパンに膨れ上がっていたということもあるでしょう。

皮膚に食いついているマダニを強引に取ると口器が皮膚内に残り痒みが続く場合がありますので、ピンセットで顔の部分を挟み左右に揺らしながらゆっくり取るか、もしくは動物病院で取ってもらうといいでしょう。

一方、ニキビダニやヒゼンダニの場合は飼い主が存在を確認することは困難と言わざるを得ません。動物病院にて顕微鏡を用い皮膚や皮脂などから成体や卵を検出することではじめて診断が下ります。

治療は殺ダニ剤などの駆虫薬を用います。ただし殺ダニ剤は卵には効果を発揮しないため、ある程度長期的な投薬を覚悟しておく必要があるでしょう。

ダニは怖い感染症をもたらしたり治療に時間がかかったりと非常に厄介。フロントラインなどで予防することが何より重要となります。

外耳炎

外耳炎は多くの犬がかかる耳の炎症を指します。「外耳」といっても耳の外を意味するわけではなく、耳介から鼓膜までの耳の穴の中のこと。耳の中を見てみて赤い、発疹が確認できる、臭いといった場合や外耳炎を疑うべきでしょう。

やっかいなのは一見して外耳炎だと気付かない場合もあること。犬は耳が痒い場合後ろ脚を使って掻こうとしますが、体型によっては耳に届かず顔や首を掻くことがあります。飼い主から見ると「首が痒いのかな?」と勘違いしがち。

犬が後ろ脚を使って首や顔、耳付近を掻いている、顔を左右にバタバタと振ることが多い場合は耳の中を注意深く観察してみてください。

余談ですが、ラブラドールレトリーバーやビーグルのように垂れ耳の犬種に多く見られる傾向があります。

外耳炎の治療法

一口に「外耳炎」といっても原因は様々。アレルギーによるものもあれば細菌やダニによって引き起こされているケースも。そのためまずは原因を特定する必要があります。

アレルギーによるものであればステロイドやアポキル錠、ダニが原因であれば殺ダニ剤、細菌によるものであれば抗生物質など。

愛犬が耳付近を痒がっているが耳の中を見ても明らかな異常は見られない場合、洗浄薬や点耳薬が手元にあるのであれば、まずはそれらを使って耳の中を清潔に保ち様子を見てみましょう。

それでも改善しないようであれば動物病院へ。

マラセチア皮膚炎

マラセチアとは犬の皮膚に常在する酵母様真菌で、膿皮症を引き起こす黄色ブドウ球菌同様健康な皮膚であれば問題になることはありません。

しかしアトピー性皮膚炎や免疫機能の低下などで皮膚のバリア機能が弱っている状況では急激に繁殖し炎症や強い痒みを引き起こすことがあります。

好発部位は指の間やお腹、外耳、目の周りなど。アトピー性皮膚炎がある犬が併発することも多いため好発部位は似通っており、また外耳炎の原因にも。

マラセチア皮膚炎の治療法

他の皮膚疾患同様、背景にアトピー性皮膚炎など他の疾患がある場合は、そちらの治療を行うことでマラセチア皮膚炎は改善に向かいます。

そうでないケースではマラセチアへの殺菌効果があるシャンプーを用い週2~3回のペースで体を洗ったり、外用薬を用いたりします。過剰な皮脂が原因になっていることもあるため、そういった点においてもシャンプーは効果的。

ストレスにより体を掻いている場合も

犬はストレスで体を掻く場合も

犬が体を掻いたり舐めたりしているからといって必ずしも痒みがあるとは限りません。ストレスによってこれらの行動を起こすことがあるからです。

全身の様々なところを舐めたり掻いたりしている分には正常な毛づくろいと考えられますが、皮膚に異常が見られないにもかかわらず特定の部位だけを執拗に気にしている場合はストレスを疑ってみましょう。

とはいえストレスの感じ方というのは犬によって千差万別。室内外の音を過剰に気にする犬もいれば、飼い主とのスキンシップの量や気温に不満を抱いていることも。

外の音に反応して吠えることが多い場合は普段いる部屋を変える、寒さや厚さを感じているようであればエアコンで適切な温度にして等、愛犬が快適に過ごせる空間を心がけてみてください。

また、飼い主とのスキンシップやコミュニケーション不足、散歩の頻度が少ないといった点にストレスを感じていることも。あまり構ってあげられていないようであれば、触れ合う時間を増やすようにしてみましょう。

ただし、構いすぎにも要注意。犬は人間より多くの睡眠時間を必要としますし、自分の時間が欲しいと感じていることもあります。対人関係同様適度な距離感を保つのもまた飼い主の愛情です。

痒がっている時の対処法

近年は共働きや単身者が増え、愛犬が体を掻いている・痒がっているけど動物病院に連れていく時間が取れない…といったケースも多いのではないでしょうか?

そういった際に飼い主はどういった対策が取れるのか? いくつかの対処法を挙げてみましょう。

薬用シャンプーで体を洗う

動物病院が開いている時間にはなかなか連れていけないが、夜であればある程度時間が取れるという場合は薬用シャンプーで愛犬の体を洗うという方法があります。

どんな皮膚炎なのかによって適切なシャンプーは異なってきますが、ミコナゾール配合でマラセチア皮膚炎や膿皮症などに効果を発揮するマラセブシャンプーを使っておけば様々な皮膚炎に対処できるでしょう。

エリザベスカラーを付ける

エリザベスカラーで掻きむしり対策

痒みや掻く部位が目や耳など顔の部分である場合は、物理的に掻けないようにしてしまうエリザベスカラーを装着するというのもひとつの手です。脱毛やただれが見られるなど症状が酷いケースでは特に効果的。

ただし、犬にとってはエリザベスカラーを付けているだけで大きなストレスになりますし、痒みの対策をしないままエリザベスカラーだけを装着するというのは犬にとって苦痛でしかありません。どんなに痒くても掻けないのですから。

エリザベスカラーを付けるのであれば、後述するステロイドやアポキル錠など痒みを抑える薬を使用するようにしてください。

ステロイドやアポキル錠を使用する

プレドニゾロンに代表されるステロイドはアトピー性皮膚炎やアレルギー性皮膚炎に広く用いられる治療薬。かゆみや炎症を抑えてくれます。一方のアポキル錠はかゆみのみを効率的に抑え皮膚炎を改善させる薬。

価格はプレドニゾロンが圧倒的に安いが副作用が心配、対してアポキル錠は価格こそ高いが副作用が少なく安心して使える治療薬。かゆみを抑えるため様々な皮膚炎に使用することができます。

これらの薬、動物病院で処方してもらう以外に、個人輸入で購入することも可能です。用量さえ間違わなければ個人輸入の方がはるかに安価で負担が少ないという特徴が。動物病院と違い24時間365日いつでも注文が可能という点も心強い。

どうしても時間が取れない、少しでも負担を抑えたいという人は個人輸入で治療薬を購入することを検討してみてはいかがでしょうか。

愛犬の痒みを見逃さないで

犬が体を掻く行動は珍しくないため皮膚トラブルを見逃しがち。しかし犬は人間に比べ皮膚疾患が多く、皮膚炎は身近な病気といえるのです。

皮膚炎などがもたらす痒みは非常に辛いもの。私たち人間にとって痒さが続くというのは非常に辛いのと同様に、愛犬も痒みにより苦しんでいるのです。そして多くは掻けば掻くほど悪化してしまうという悪循環に。

そういった愛犬の苦しみを解消してあげられるのは飼い主のみです。裏を返せば飼い主が無頓着・無責任であれば愛犬は痒みによって一生苦しむ可能性も。

アトピー性皮膚炎や膿皮症などは悪化すると全身に広がり激しい痒みをもたらすと共に、皮膚がボロボロになり著しい脱毛が見られることも。

そんな状態になる前に適切な治療・対処をするためにも、愛犬が体を掻いている場合は頻度や部位を注意深く観察するようにしてください。

あわせて読みたい関連記事

カテゴリ一覧