アンチノールは本当に効果があるのか?

アンチノールの効果は?

多くの動物病院で取り扱っている「アンチノール」という犬用サプリメントをご存知でしょうか?全国6,000件以上の動物病院で購入できるということもありNO.1サプリメントの呼び声が高い商品。

毛並みが綺麗になったり皮膚や腎臓疾患が改善したりと様々な効果があるとされるアンチノール。中でも腰痛や関節痛に絶大な効果があるとして多くの支持を集めています。

事実ネット上には絶賛する声が溢れ、多くの動物病院が有効性を謳っている状況。しかししょせんはサプリメント。本当にそんな劇的な効果があるのでしょうか?

私自身、飼っているパグが関節炎により散歩を嫌がるようになった際にアンチノールを飲ませたことがあります。その際に感じた効果や印象を包み隠さずお伝えしたいと思います。

アンチノールとは

アンチノールはVetzPetz(ベッツペッツ)というブランドから販売されている動物専用のサプリメントで、この分野では最も知名度や人気がある商品と言えるでしょう。

ニュージーランド産のモエギイガイから、特許を取得している独自製法により非加熱で「PCSO-524」という脂肪酸を抽出。このPCSO-524は91種の脂肪酸を含むとされ、アンチノールの効果を決定づける重要な主成分となっています。

その脂肪酸の中にはDHAやEPA、オメガ-3脂肪酸など犬の健康に寄与するものが多数含まれており、それが様々な症状に効く理由となっているとのこと。

同じくモエギイガイを主成分とするサプリメントは複数存在すれど、PCSO-524を含んでいるのはアンチノール以外に存在しないことから、「一般的なモエギイガイサプリメントとは一線を画す」という位置付けになっているよう。

このPCSO-524に加え、抗酸化作用があるd-α-トコフェロール(ビタミンE)やオリーブオイルを加えたものがアンチノールにないます。

アンチノールはどんな症状に効果がある?

モエギイガイから独自製法で抽出されるPCSO-524には高い抗炎症作用があるとされ、それにより関節や皮膚、被毛、心血管、腎臓などの健康維持に効果があるとされます。

特に多くの人が期待するのは関節や腰痛などの症状緩和。

犬も人間と同様に加齢とともに腰や膝関節、股関節などに障害や痛みが発生する可能性が高まります。加齢による筋肉の衰えや関節炎、長年の酷使による軟骨の消耗、石灰化などが主な原因。

その中でも抗炎症作用があるアンチノールは関節炎に効果を発揮し、膝関節や股関節、肩関節などに炎症を起こしている犬に対し4週間投与した結果、9割ほどの犬に改善が見られたとされます。

NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)を使用するような場面においてもアンチノールを与えることで効果を期待できるとも。

また、高脂血症の犬9頭にアンチノールを8週間投与した結果、悪玉コレステロールや中性脂肪が有意に低下したという結果もあります。

ただし中性脂肪が減少したのは2週目と8週目。4週目は使用前の水準に戻っているため必ずしも信用できるデータではありません。そもそも9頭だけの試験で統計的に有意と呼ぶのは無理があるという見方も。

とはいえ、複数の試験で一定の有効性が示されているというのは心強いところですよね。

実際にアンチノールを使ってみた印象

私自身はこれまで複数の犬を飼っており、そのうちの一頭、現在飼っている黒パグは標準的な同種の犬に比べ足が細長く、しかも後ろ足がO脚という特徴があります。パグとしては胴も長め。

足が長い黒パグ

そのためか7歳頃から腰が曲がりだし、8歳を過ぎた頃から足を痛がる素振りを見せること増えてきました。メスなのに一時体重が9kgを超えていたことも足や腰の負担を増やした原因かもしれません。

診断は「変形性関節症」。加齢によるものだと根本的な解決は難しく、高齢のパグということもあり手術には相応のリスクが伴う…そういった理由から足腰に負担がかかる行動は控えさせると同時にアンチノールを試してみることに。

あまり効果は見られなかったアンチノール

ネットであねちのーるのことを調べると動物の関節炎や変形性関節症に激的な効果があるような話や口コミが多数を占めていますが、少なくとも私の犬でそういった効果を感じることはありませんでした。

「少し痛みが和らいでいるかな?」と感じても翌日にはまた元通り…アンチノールを飲ませる前と後で愛犬に大きな変化は見られず、その後アンチノールの服用を中止した際も特に変化は見られませんでした。

その後他のモエギイガイを用いたサプリメントなども試してみましたが、思うような効果は得られず。サプリメントだけに“気休め ”といった表現がぴったりくるのかなと感じた次第。

ネット上には「アンチノールが効いた!」という記事や動物病院によるプッシュが溢れています。しかしあまり過信はしないほうがいい気がします。

効く犬もいれば効かない犬もいるのです。

アンチノールの問題点

アンチノールの一番の売りは抗炎症作用があること。それにより膝や腰など関節の炎症を抑え痛みを軽減する目的で使用することが圧倒的に多くなっています。それ以外にも心疾患や皮膚、腎臓に良いとも。

そしてそれを裏付けるだけのエビデンス(科学的根拠)があるとメーカーが謳っていることも特徴。自社で臨床試験を行い、十分な効果が得らえたことがその理由となっています。

しかし、本当の意味で客観的かつ確実な科学的根拠が得られているのであれば、今ごろ医薬品として使用されているはず。

臨床試験の信頼性が低く、かつ不確実だからこそ栄養補助食品であるサプリメントという形態を取らざるを得ないと考えるのが自然なのです。

アンチノールの特徴であるオメガ3脂肪酸は人間の医学界においても注目されている成分ということもあり、実に様々な研究・試験が行われています。対象は心疾患や関節リウマチなど、アンチノールにも共通しています。

しかし、オメガ3脂肪酸やDHA、EPAがこれらの疾患を改善するかどうかの明確な結論は得られていません。むしろ否定的な試験結果のほうが多いくらい。

長年にわたり多くの試験が行われている人間を対象にしたものに対し、アンチノールの試験結果はあまりにも脆弱です。

販売メーカーによる自社データと、アンチノールを販売している獣医師による「良い結果が得られている」という経験則。はっきり言ってしまうとこういったものは科学的根拠とは呼びません。

できる限り同じ条件の被験者を数多く用意し、対象となる成分や薬を同じ条件で与え、それを客観的な目で判断する。それがエビデンス(科学的根拠)の大前提だからです。

アンチノールを販売するメーカーがいう“科学的根拠”は自社のデータのみ。色々と調べてみましたが、第三者による試験結果は存在していません。客観性は…まったくないですよね。

動物病院で扱っている点にも違和感

アンチノールの売り文句のひとつに「全国6,000件以上の動物病院で購入できる」というものがあります。動物病院で獣医師の勧めのもと購入できる…これほど信頼性が高いものはありませんよね。

しかし医療機関でサプリメント…人間の病院ではちょっと考えられない事態。明確な科学的根拠に基づいて治療を行う医師が、科学的根拠のないサプリメントを処方・販売するなど通常ありえないからです。

このあたりに関しては人間に対しての医療と犬に対しての医療の違いか。保険診療が基本となる人間の病院に対し、動物病院は自由診療。どんな治療法を提供しても医師の自由ですからね。

とはいえ、獣医師がサプリメントを販売するという点については違和感を覚えざるを得ません。何というか…金の匂いがします。まあ動物病院も基本は営利目的であるため当然といえば当然ですが。

アンチノールのメリット

私が飼っている犬に対しては期待するような効果が出ず、かつサプリメントということでツッコミどころも多いアンチノール。そうはいっても色々とメリットや良い点があるもの事実です。

選択肢としての存在

犬に限らず人間にも当てはまることとして、関節痛や腰痛に対する治療というのは選択肢が限られるという問題があります。

レントゲンを撮っても原因が特定されないことも多く、痛み止めと湿布を処方されて終わり…という経験をしたことがある人も多いのではないでしょうか。これは犬に関しても同様です。

何の解決にもならない鎮痛剤を処方されるくらいなら、関節の炎症を抑えてくれるとされるアンチノールに希望を見出すのは自然流れといえます。

対症療法でしかない鎮痛剤と、高額かつリスクをも伴う外科的手術…その間を埋める存在としてアンチノールがあるという考え方もできるのです。

そういった医療の隙間をサプリメントであるアンチノールが埋めざるを得ないという点には違和感を覚えますが…

効果を実感している人が多い

サプリメントであるアンチノールにまともな科学的根拠がないことは疑いようがありません。しかし愛犬に使用している人や獣医師の多くが「効果があった」と感じているのもまた事実です。

こういった個人の感想は科学的根拠とは到底呼べるものではありませんが、参考になるのは間違いありません。

ただし、関節炎というのは良化と悪化を並のように繰り返しながら徐々に悪化していく傾向があり、短期的に「良くなった」という意見はあてにならないと考えていたほうがいいでしょう。

副作用のリスクがほとんどない

アンチノールはただの健康補助食品という位置付けであるため、副作用のリスクがほとんどないというのが大きなメリット。

関節痛や腰痛の治療に多く用いられるNSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛剤)は高い効果を発揮する一方で、食欲不振や嘔吐、下痢といった消化器への副作用が出る恐れがあります。

その点アンチノールは副作用がほとんどありません。そういったリスクから解放されるというのは飼い主にとって嬉しいところ。

とはいえ薬効と副作用は表裏一体。副作用がないとされるアンチノールがどこまで効果を発揮するのかは疑問視する声も。個人的には「副作用がないのに確かな効果がある」と謳うものはあまり信用していません。

マイルドな効き目で定評がある漢方薬にすら副作用は必ず存在しますからね。

それほど高価ではない

ペットブームに乗り様々な犬用商品が登場し、その中にはやたらと高額なサプリメントも多数含まれています。そんな中アンチノールは小型犬であれば1ヶ月分約3,000円と、それほど高くないという特徴が。

最も実績や知名度がある犬用サプリメントである割に現実的な価格帯であることが人気の一因と見ていいでしょう。とはいえ1ヶ月3,000円は決して安いわけでもない。これを安いと見るか高いと見るかは飼い主次第。

アンチノールに過信は禁物

多くの動物病院で販売されているとあり“NO.1サプリメント”の名を欲しいままにしているアンチノール。それに呼応するかのように高い評価が溢れています。

確かに副作用なく愛犬の関節痛や腰痛の苦しみから解放できるのであればこれほど嬉しいことはありません。しかし実際私が愛犬に使用してみた結果は「ほとんど効いていない」という残酷なものでした。

これからアンチノールの使用を考えている人は今一度冷静に考えてみてください。アンチノールはしょせんサプリメントなのです。科学的根拠に乏しく効果の裏付けがないからこその健康補助食品という点を認識しておく必要があります。

サプリメントは「体に良いものを飲んだ」という思い込みによって効果を実感した気になる典型的な商品といえます。しかしそれは人間に対してだけの話。犬に「信じる者は救われる」は通用しないのです。

飼い主だけが効いた気になって、実際の犬の苦痛は消えていない…そういった自己満足だけは避けたいものです。

アンチノールの効果について否定するつもりはありませんが、科学的根拠がないサプリメントに過度な期待を抱くのは間違っていると言わざるを得ません。

とはいえ愛犬の苦しみを軽減するために何かしてあげたいという飼い主の心理も痛いほど理解できます。その方法がアンチノールというのであれば、それに賭けてみたいと考えるのは自然なこと。

そういったことから、アンチノールを飲ませる場合は「このサプリメントは効く」という先入観を捨てたうえで、愛犬の症状の変化を冷静に判断するようにしてください。

冷静かつ客観的に判断した結果間違いなく聞いているようであればアンチノールを続けるべきでしょう。しかし改善の傾向が見られない場合は別の対処法を考えるようにしましょう。

あわせて読みたい関連記事

カテゴリ一覧