犬を飼う場合はフローリングに注意

犬を飼う場合はフローリングに注意

かつて日本家屋の床といえば畳が主流でした。しかし昨今の住宅は洋室が主流となり床のほとんどはフローリングに。しかしそのフローリングが愛犬の足腰や股関節に負担をかけているかもしれませんよ。

ツルっとしたフローリングは清潔感があり、掃除のしやすさもこれに勝るものはありません。しかしその特性は滑りやすさに直結。肉球が硬く柔軟性がない体を持つ犬との相性は最悪なのです。

フローリングが犬にもたらす害や病気とは?それを避けるための対策にはどういったものがあるのでしょうか?

犬がフローリングで滑ると起きる問題

人間でも靴下やスリッパで歩いていると滑ることがあるフローリング。「犬がたまに滑るくらいなら問題ないんじゃないの?」と感じている人もいるかもしれません。しかしそれは大きな間違い。

犬は人間のように常にゆっくり歩くとは限りません。若い犬であれば家の中を走り回ることもありますし、興奮して激しい行動をすることもあるでしょう。そうなった時の滑りっぷりは激しいもの。

それが“たまに”であれば大きな問題にはならないでしょう。しかしそれが日常的かつ長期間にわたると様々なリスクが顕在してきます。

変形性関節炎

日常的にフローリングで滑っていることは関節に無理な力が頻繁に加わっていることに他なりません。それによって引き起こされる可能性がある病気の一つに変形性関節炎が挙げられます。

関節や足を痛がっているそぶりを見せる、運動を嫌がるなどの症状が見られる場合は、変形性関節炎を疑う必要があります。

膝蓋骨脱臼

関節が外れたりずれたりする“脱臼”もフローリングによる滑りが原因で起こる可能性があります。中でも膝のさらにあたる膝蓋骨は脱臼しやすい部位。

フローリングの上で暴れたり走ったりすると滑って倒れ込むことがあります。その際に膝に無理な力かかり脱臼してしまう可能性があるのです。

トイプードルやチワワ、ポメラニアン、ミニチュアダックスフンドといった小型犬が発症しやすい特徴。これら犬種を飼っている場合は特に注意が必要です。

股関節形成不全

膝蓋骨脱臼とは逆に大型犬に多い股関節形成不全。

遺伝的な要素によって発症することが多い股関節形成不全ですが、成長期である仔犬の頃に股関節に無理な力がかかることで誘発されることが分かっています。

動きが活発な仔犬の頃にフローリングで滑ってしまうような環境にいると股関節形成不全になってしまう可能性が高まるのです。また、すでに発症している股関節形成不全を悪化させる原因にも。

股関節形成不全によって変形性関節症が引き起こされることが多いのも特徴。

椎間板ヘルニア

私たち人間も多く発症する椎間板ヘルニア。犬もフローリングが原因でこの病気になってしまう可能性があります。

フローリングで滑ったり踏ん張ったりする行動は関節や足はもちろん、腰にも大きな負担をかけています。それが長年にわたって積み重なることで椎間板ヘルニアになってしまう恐れがあるのです。

特にミニチュアダックスフンドやコーギーなど、胴が長く腰への負担が大きい犬種は要注意。最悪の場合後ろ足が動かなくなってしまうケースも。

犬がフローリングで滑る原因

犬がフローリングで滑る理由

フローリングの家で犬を飼っている、飼っていた人であれば、愛犬が滑る場面を幾度となく見ていると思います。一方で同じく人気のペットである猫がフローリングで滑ることはありません。

この差はなんなのか?

犬の肉球は硬く乾燥している

犬の肉球を触ってみれば一目瞭然。犬の肉球は硬く、かつ乾燥していますよね。しっとりとして柔らかい猫の肉球とは似て非なるものなのです。

例えるなら、猫の肉球はできたての柔らかい餅、犬の肉球は時間が経ってひび割れ、カピカピガチガチになった餅といったところ。

この肉球の硬さがフローリングで犬が滑る最大の理由と考えていいでしょう。

体が硬い

柔軟性があり自在に形を変えられる猫に対し、犬の体は硬いもの。抱っこしてみるとその違いに驚く人もいらっしゃるでしょう。

体に柔軟性があれば仮に滑りそうになっても、巧みな体重移動や体勢の変化でそれを防止することができます。しかし犬の硬い体ではそれもままなりません。

爪が伸びすぎている

犬の爪は人間の爪と同様に常に伸び続けています。多くの場合、散歩によって削れたり定期的にカットしたりすることによって短い爪を維持しているのではないでしょうか。

しかし、何らかの理由により長期間散歩に行けない場合や、飼い主には切らせてくれない犬の場合、爪が異常に伸びてしまうことがあります。そんな伸びすぎてしまった爪もフローリングで滑る原因になるのです。

というのも、犬の爪は地面に接するかどうかくらいの長さが適切。一方爪が伸びてしまうとカールする形になり足を床に置いた時爪が先に当たってしまい、肉球が床にフィットしない状況に。

地面を掴むはずの肉球が床にフィットせず爪で浮いている状態…どれほど滑りやすい状況か想像が付くと思います。

足裏の毛が伸びている

犬の足裏の毛が長いとフローリングで滑る

犬の肉球と肉球の間には毛が生えています。

この毛、短毛種であれば放置していても大きな問題になることはありませんが、毛が長い犬種の場合肉球を被うように生えるためフローリングで滑る原因になってしまうことがあります。

愛犬がフローリングでやたらと滑ると感じている場合は足裏の毛をチェックしてみてください。

フローリングで滑らないようにする対策

今現在犬を飼っている、もしくは近々買う予定があり、かつ住んでいる家の床がフローリングであった場合、早急に対策するべきです。それによって愛犬の関節や足腰への負担を大きく減らすことができるはず。

幸いなことにフローリングの負担を軽減する方法は様々あります。ご自身の状況に合わせた対策を考えてみてください。

足裏の毛を切る

毛が長い犬種の場合足裏の毛も伸びやすく、それが肉球と床の間に入ることにより滑りやすくなってしまいます。そのためこまめなカットを心がけたいところ。

ただし、足裏の毛を切ったところで滑りやすいことに変わりはなく、他の対策と併用する必要があります。

爪をこまめに切る

犬は爪を地面に食い込ませたり引っかけたりすることで踏ん張ることができる一方、爪が伸びすぎると肉球の接地を邪魔する存在に。そのため定期的な爪切りが必要になります。

頻度は2週間~1ヶ月に1回程度。仔犬の頃から飼い主が爪を切る習慣を身に付けさせると、こまめなケアがしやすくなります。

犬用靴下をはかせる

近年、犬にはかせる靴や靴下が様々登場しています。足裏の部分にいシリコンやゴムが施されているため、はいていない状態に比べ滑りにくいというメリットが。

しかし、基本的にそれ以外に大きなメリットはなく、愛犬のストレスになる、犬本来の爪や肉球で踏ん張ることができない、蒸れる等デメリットも目立ちます。

犬が本来持つ機能を妨げることから、個人的にはあまりおすすめしません。

無垢のフローリングにする

フローリングと一口に言っても素材は様々。一般的なフローリングは施工しやすく安価な合板のものです。硬くてツヤツヤツルツルなのも大きな特徴。

一方、無垢の木を使用したフローリングというものも存在します。

無垢といってもその材質は様々なので、堅い木を用いれば当然滑りやすくなります。しかしパインや杉のような柔らかい針葉樹であればほどよく爪が引っかかり滑りにくくなります。

その分傷が付きやすいというデメリットもありますが…

すでに建っている家やアパート・マンションの場合、後から無垢のフローリングに張り替えるのは現実的ではありませんが、これから家を建てる、大規模なリフォームを予定しているという人は検討してもいいかも。

滑らないコーティングをする

フローリングに塗るだけで滑らなくなるというコーティング剤やワックスを使用するという方法もあります。フローリングという環境を変えずに行えることから、内装の雰囲気を重視する人にはもってこいでしょう。

ただしデメリットも多く存在します。

塗るのに手間がかかること、数ヶ月に1回塗る必要があること、商品によって性能にばらつきがあることなど…

また、フローリングが多少滑らくなったとしてもその“硬さ”に変わりはありません。爪の引っ掛かりがない以上劇的な効果までは望めないというのが実情。「しないよりはまし」と考えておくべきでしょう。

愛犬のことを第一に考えるならあまりおすすめはしません。

ジョイントマットを敷く

犬の滑り止めにジョイントマット

ホームセンターなど様々なお店に売られているジョイントマットを敷き詰めるという方法もあります。

ジョイントマットは1cmほどの厚さがあり、かつ非常に柔らかいので犬の足腰や関節への負担は大きく軽減されます。また万が一なにかをこぼしてしまったり粗相をしてしまったりした場合にその部位だけ簡単に交換できるのも大きなメリット。

ジョイントマットの多くは1辺30~60cm程度の正方形であるため、犬が使用する部屋や歩く範囲だけ敷くのも容易です。

一方、見た目は諦める必要があります。近年は様々な柄のジョイントマットが販売されているものの、異物感や安っぽさはどうにもできません。凄まじいほどの生活感!

とはいえ、犬の健康を考えれば十分我慢できるレベル。

クッションフロアを敷く

フローリングの滑りはクッションフロアで防ぐ

フローリングで犬に負担をかけたくはないがジョイントマットは安っぽすぎて嫌だ…そういう人にはクッションフロアという選択肢も。

クッションフロアとは洗面室などによく敷かれている、若干のクッション性と滑りにくさを両立した素材のこと。一般的な厚みは2mm前後で、犬の爪も十分食い込むためフローリングに比べかなり滑りにくくなります。

フローリングの柄をしたものも多く販売されており、全面に敷くことで違和感のない内装デザインに仕上げられるのも大きなメリットといえるでしょう。

クッションフロアはホームセンターなどで量り売りされているため、自分で施工することも十分可能。器用な人であれば、動画などを参考にしながら施工すればそれなりに綺麗に仕上がるでしょう。

ただし、クッションフロアの表面はそれなりにツルっとしているものが多いため、暴れたり走ったりすると多少滑ってしまう可能性があります。

カーペット・絨毯を敷く

犬の足腰や股関節に最も負担をかけず、かつ部屋の見た目を損なわないベストな方法は、犬が使用する部屋や通路全てにカーペットや絨毯を敷いてしまうこと。

ある程度のクッション性があり、かつ滑らず、爪もしっかりと引っかかる…犬にとってカーペットや絨毯ほど適した床は存在しないでしょう。部屋のデザインに適したものを敷くことで高級感や統一感を演出できるのも大きな魅力です。

デメリットとしては何かこぼした時や粗相をした時にシミになりやすい、ダニやノミなどの温床になりやすい、掃除しにくいためハウスダストにアレルギーがある人やペットがいる場合は神経を使う等。

何を優先するかは各々異なると思いますが、愛犬の健康を第一に考えるのであれば、カーペットや絨毯を敷くという選択も視野に入れてみてはいかがでしょうか。

犬を飼うならフローリングは諦める覚悟で

犬を飼うならフローリングはタブー…とまでは言いませんが、股関節や足腰に負担になるのは間違いありません。若く元気がある犬であればあるほどその負担は蓄積し、数年後にその影響が現われてきた頃には後の祭りです。

私自身、最初に犬を飼った時にフローリングの家に引っ越した際、足腰への負担を考え廊下や寝室、リビングに至るまで絨毯を敷いたという経緯が。

家の顔ともいえるリビングに絨毯を敷くことに抵抗がなかったといえば嘘になります。しかし絨毯の上で走り回ったり遊んだりする愛犬を見るに、絨毯を敷いたのは決して間違いじゃなかったと実感します。

犬を飼う以上健康管理は飼い主の義務。大半の人はそれを理解しているはずです。

愛犬がある程度高齢になって足腰や関節に異常が出てきた時「あの時対策していれば…」と後悔しないためにも、フローリングはきっぱりと諦めるくらいの覚悟を持って犬を飼って欲しいと感じます。

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