犬に靴下や靴は必要ない!デメリットだらけ

犬に靴下や靴は必要ない

昔に比べ犬と本当の家族のように接する飼い主さんが増えた結果、犬への愛情のかけ方も大きく様変わりしてきました。かつては外飼いが当たり前だったのに対し現在は室内飼いが当たり前というのは良い例でしょう。

中には服を着せたりバンダナをまいたりなど、ファッションに力を入れる飼い主さんも。そんな中で今回注目したいのは“犬の靴下や靴”についてです。

それほど頻繁に見かけるわけではありませんが、愛犬に靴下や靴を履かせる飼い主さんは存在します。犬用の靴下や靴もかなり増えてきた印象。そこには明確なメリットがあるという。

しかし、犬に靴下や靴を履かせる意味は本当にあるのでしょうか?元々は野生の動物である犬に靴下や靴が必要なのか考えてみたいと思います。

犬に靴下や靴が必要ない理由

犬が靴下や靴を履くメリットに関して、ネット上にはもっともらしい理由が多数掲載されていると思います。しかし的外れなものが非常に多いのです。

犬が靴下や靴を履くメリットとして典型的なものを挙げ、それに反論する形で靴下や靴がいかに的外れなものか説明したいと思います。

真夏のやけど防止

真夏の昼間ともなると気温30度超えは当たり前。晴れた日であればアスファルトの温度は50度をゆうに超えます。その上を犬が歩けばやけどをするリスクがあるのは想像に難くありません。

そういった時に靴を履かせればやけどの防止ができる…非常に説得力がある話ですよね。やけどを回避するために靴を履かせるのは飼い主の愛というわけです。

真夏の昼間に散歩をするのが間違い

しかし、そもそも真夏の昼間に犬を散歩に連れ出すのが大間違い

靴を履かせれば肉球のやけどは予防できるかもしれません。しかし地面付近が凄まじい高温状態にあることに変わりはなく、命の危険が付きまといます。犬の熱中症の死亡率は約50%と非常に高いのです。

そのため、まともな飼い主であれば真夏の昼間に犬を散歩させることは絶対にありません。時間の都合上どうしても昼間しか空いている時間がないようであれば、その日は散歩させるべきではありません。

真夏の犬の散歩はアスファルトの温度が低い朝や夕方以降に行うのが常識です。肉球のやけど防止に靴を履かせるなんて発想自体がそもそも間違っているのです。

肉球のケガや傷の予防

屋外には何が落ちているか分からず、万が一犬がガラスの破片などを踏んでしまった場合は肉球をケガしてしまう恐れがあります。それを防ぐためにも靴を履かせましょう…という説明を目にします。

靴を履いていれば万が一ガラスの破片など鋭いものを踏んでしまった場合でも肉球を守ることができるでしょう。

肉球のケガ防止は詭弁

基本的に犬の肉球の皮膚は厚くなっており、傷ついたりケガしたりといったことはそうそう起こることではありません。毎日散歩しているような犬であればなおさら肉球は丈夫になっています。

実際、私はこれまで数匹の犬を飼っていますが、散歩中に何かを踏んでケガしたという経験は一度もありません。それほど稀な事象なのです。

後述しますが、肉球の発汗による体温調整や肉球から得られる外部情報の遮断といったネガティブな部分に比べれば、靴によるケガの防止というメリットは誤差の範囲内でしかありません。

防寒対策

夏の灼けるようなアスファルトも、冬になれば氷のように冷たい物質に様変わりします。また室内においてもフローリングなどの冷たさは私たち人間も痛感していることでしょう。

そんな冷たい地面や床による体温低下を靴下や靴が防いでくれる…とのこと。

末端が冷え切る冷え性に悩む飼い主さんからしてみれば、愛犬に同じような辛さを味あわせたくないというのは愛情なのかもしれません。

犬に過度な防寒は不要

冷たい地面を歩けば、そこに直接接している肉球はもれなく冷たくなります。それが体温の低下や冷えを誘発すると考える人もいるでしょう。

しかし肉球の皮膚や脂肪は厚く、ちょっとやそっとで内部の体温が冷え切ってしまうことはありません。

仮に肉球が冷やされることによってその周辺を走っている血管中の血液が冷やされたとしても、犬が持つ熱交換システムによって血液はすぐに温めなおされます。

犬が雪の上を走り回っても平気なのはこういった理由があるからなのです。

一部小型犬やフレンチブルドッグ、パグなどの短頭種は寒さに弱いことで知られていますが、それでも真冬に散歩して体調を崩したなんて話は聞いたことがありません。

極寒の冬の北海道で朝晩に散歩をするというのであればいざしらず、日中の常識的な寒さ程度で靴や靴下による防寒が意味をなすことなどほとんど考えられないのです。

近所を散歩している犬のほぼ100%が靴や靴下を履いていないのですから、説明するまでもないですよね。

フローリングなどの滑り止め

昔の日本の家といえば畳が一般的でしたが、近年はほとんどがフローリング。和室は一切存在せず全部屋フローリングなんてケースも珍しくありません。

そんなフローリング、掃除がしやすいため衛生面や手入れのしやすさは抜群である一方、体や肉球が硬い犬にとってはツルツル滑る厄介な存在。これが原因で足腰や股関節に悪影響がある場合も。

しかし、愛犬に滑り止めが付いた靴下を履かせればフローリングで滑ってしまうことを予防できます。靴下によって足腰や股関節への負担をなくすことができるのです。

靴下で滑り止めという考えが間違い

愛犬がフローリングで滑らないよう靴下を履かせる…一見理にかなっているように感じますが、これは大きな間違いです。

様々なデメリットが存在する靴下を無理やり履かせて人間の都合に合わせる…飼い主の自己満足とエゴに過ぎないからです。そもそも靴下を履かせたところで滑る時は滑りますし、脱げてしまうことも多々あります。

愛犬のことを第一に考えるなら、カーペットやクッションフロアを敷くべき。自然な状態である素足で過ごさせることが犬にとって一番なのは言うまでもありません。

手足のケガを舐めさせないため

何らかの理由により手や足をケガしてしまった際、靴下や靴を履かせることで舐めたりかじったりして悪化させる事態を避けることができるほか、アトピーが原因で指間を執拗に舐める行動も制限できます。

靴下や靴は簡単に脱げる

靴下や靴を履かせたことがある飼い主さんであれば初期に必ず「すぐ脱いでしまう」という状況を経験していると思われます。

慣れればそういったことはあまりなくなるものの、痒かったり痛かったりすれば話は別。口で靴下を引っ張って脱いでしまうため舐めたりかじったりといった行動を抑制する目的で使用しても無意味に終わることも。

そういった行動を制限させたいのであれば素直にエリザベスカラーを使うべき。

靴下や靴のデメリットは多数

犬に靴下や靴を履かせるデメリット

ネットの情報を見ているとやたらとメリットばかりが強調される犬の靴下や靴。しかしよくよく見てみるとそういったサイトは靴下を売っている業者に誘導するなどお金の匂いが漂っていることに気付くはず。

そういった利益を排除し犬の靴下や靴を冷静かつ客観的に見るとデメリットの方が多いことが分かります。

具体的なデメリットを挙げてみると…

蒸れる

人間は運動したり気温が高かったりして体温が上昇する状況になると全身の汗腺から汗をかき体温を調整します。しかし犬は汗腺が極端に少なく、鼻の周りと肉球周辺のみの汗腺が発達している程度。

その肉球を靴下や靴で覆ってしまえば、汗によって蒸れて細菌が繁殖しやすい状況になるのは想像に難くないと思います。当然炎症の原因にもなります。

健康な犬はもとより大きな問題になるのはアトピー性皮膚炎などの症状がある皮膚の弱い犬。アトピー性皮膚炎や膿皮症などの典型的な症状に肉球周りが炎症を起こして激しい痒みを引き起こすというものがあります。

そんな犬が靴下や靴を履けば症状を悪化させるのは目に見えていますよね。

体温調整の阻害

汗腺が極端に少ない犬にとって肉球からかく汗は体温調整に欠かせないもの。肉球からかいた汗が気化する際に熱を奪い体温を下げる働きをします。

しかし靴下や靴を履けば汗の蒸発が阻害され体温調整しにくい状況に。

犬本来が持つ体の調整機能を阻害するほどのメリットなど靴下や靴には存在しません。

うっ血

靴下や靴を履かせることによって起こるトラブルとして無視できないのが“うっ血”です。「靴下や靴程度でうっ血?」と感じるかもしれませんが、これが結構多い事例なのです。

犬の手足というのは人間よりはるかに細く、また脂肪が少ないという特徴があります。そのため、人間にとってはどうってことない程度の締め付けでも犬は簡単にうっ血してしまうのです。

それが短時間であればまだしも、長時間履かせるような状況で起こってしまうと最悪の場合壊死してしまい切断を余儀なくされるケースも。

どうしても靴下や靴を履かせたいのであれば、サイズ選びや締まり具合には細心の注意を払うようにしましょう。

ストレス

人間にとっては当たり前の存在である靴下や靴。しかし犬にとっては異物以外の何ものでもありません。履かせたことがある人であれば初期の拒絶反応を目の当たりにしていることでしょう。

仔犬の頃から慣れさせているのであればまだしも、成犬になってから履かせようとしても嫌がって無理だったというケースも多数。犬にとって靴下や靴はそれほどまでに違和感の塊なのです。

靴下や靴に慣れ表面上は嫌がらなくなったとしても、それが「=ストレスに感じていない」とは限りません。

人間と違い犬は靴下や靴を履く必要性やメリットを理解していないため、自然な素足でいることが常にベストと考えていることでしょう。

情報の遮断

基本的に動物というのは全身の感覚を使って外部の情報を取り入れようとします。中でも唯一地面と接している足は外部の状況を知る上で非常に重要な器官といえるでしょう。

しかし、靴下や靴を履けばこういった情報の多くは遮断されることに。

それが当たり前の人間にとってはどうということはない問題なのでしょうが、足裏からの情報が命に直結する動物の場合は事情が異なります。もしかしたら強い不安や恐怖を感じているのかもしれません。

靴下や靴は飼い主の自己満足に過ぎない

「地面が暑いから、冷たいから」「床が滑りやすいから」。その対策のために靴下や靴を履かせるのは飼い主の愛情だと考える人もいるでしょう。しかしそれは価値観の押しつけになっているケースも。

ここまで何度も書いているように、犬にとって靴下や靴は異物以外の何ものでもありません。肉球が汗をかく数少ない場所である点などから考えても、体の仕組み的に合わないのは明白です。

犬に靴下や靴を履かせることのメリットを強調するサイトが目立ちますが、その多くは商品を販売したい、販売するサイトに誘導して利益を得たいという思惑が透けて見えます。

人間の都合、利益を優先した情報に踊らされることなく、「愛犬にとって何が一番快適なのか」を冷静に考えれば、靴下や靴を履かせるべきか否かの答えが見えてくるはず。

何と言いますか…靴下や靴を履かせている飼い主さんを見ると、「愛犬に愛情を注いでいる」というよりは「愛犬に愛情を注いでいる風な自分に酔っている」という印象が拭えません。

なぜなら、本当の意味で愛犬を第一に考えているのであれば、靴下や靴を履かない自然な状態で快適に過ごすことができるよう配慮するはずだから。

デメリットの多い靴下や靴を履かせ犬を人間の生活に合わせさせるのではなく、散歩の時間帯に配慮したり足腰への負担が少ないカーペットを敷いたりするなど、人間が配慮を見せるべきと個人的には考えます。

それを勘案してもなお靴下や靴を履かせる必要がある状況というのはほとんど存在しないことに気付かされるはずです。

犬を飼ううえである程度の上下関係を確立し、飼い主の言うことを聞かせることは必要なしつけといえます。しかし、不必要な靴下や靴を履かせるという行為は決してしつけではありません。

犬に靴下や靴を履かせる行為は飼い主の自己満足…この言葉がピッタリ当てはまるのではないでしょうか。

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