犬のしつけの必要性とは?どこまで教えるべき?

犬のしつけの必要性

人間の子供はもとより犬に対しても“しつけ”は非常に重要とされます。しかしその範囲は非常に曖昧と言わざるを得ません。

そもそも本当にしつけは必要なのか?よくよく考えてみると、昔はまったくしつけをしていない飼い犬も多く見受けられましたよね。今でもしつけらしいしつけをしていない犬はいくらでも存在します。

犬に対し人間が強制することになるであろう“しつけ”の必要性や重要性は?現実的にどの程度のしつけが必要なのか?しつけの気になる点を見ていきましょう。

犬に対するしつけの必要性とは

そもそもなぜ犬にしつけが必要とされているのか?その理由は単純明快、人間と共生するために必要だから

犬は本来野生動物。当然ながらしつけを行う飼い主は存在しません。ただし群れで行動する犬には独自のルールがあり、それは群れでの生活の中で自然と身についていくことになります。

つまり、人間と一緒に暮らす犬も、犬の群れの中で生活する犬も何らかのルールに則る必要があるのです。人間社会の場合に必要なのが犬に対する“しつけ”ということに。

例えばトイレ。広い庭に放し飼いであればトイレのしつけを行う必要はないかもしれませんが、家の中で飼う場合はそうはいきませんよね。

人間がトイレで用を足すように、犬にも決まった場所で用を足してもらう必要があります。それが人間社会のルールであり、一緒に暮らすために必要な決まり事だからです。

上下関係を構築する意味合いも

犬の社会は明確な順位付けが行われる縦社会であることから、一般的には飼い主と飼い犬は上下関係を構築するべきとされます。もちろん飼い主が上になることが望ましい。

その関係を構築するうえで必要になるのがしつけ。「言うことを聞かせる」という状況は飼い主を上の存在だと認識させる意味合いもあるのです。

上下関係がしっかりとできている場合はしつけもスムーズに、できていない場合はしつけに苦労することでしょう。しつけと上下関係を好循環にするのも悪循環にするのも飼い主次第といえるでしょう。

最優先するべきしつけ

犬に必要なしつけとは

一口に「しつけ」といってもその範囲は人によって異なります。おすわりやお手をさせることがしつけと考える人もいれば、そんなものは必要ないと考える人もいるでしょう。

とはいえ、一緒に暮らすにあたり絶対に行うべきしつけというのは確実に存在します。それがどんなものか、どういった理由によるものなのか紹介していきますので参考にしてみてください。

トイレ

かつて犬は外で飼うのが当たり前でした。そのためトイレを教えるという習慣は存在しなかったといっていいでしょう。しかし近年は室内飼いが当たり前になり、犬にも人間と同様に特定の場所で用を足しもらう必要が。

人によっては「散歩の時しかさせない」「おしっこやウンチをしたそうな時は庭に出す」という人もいるでしょう。そうすることで煩わしいトイレのしつけを省略することも可能です。

しかし、飼い主が高齢化して外に連れ出すのがしんどくなった時や、飼い犬が高齢になり足腰が弱ってきた場合、外に出して用を足させるという行為が厳しくなってくるケースも想定しておく必要があります。

また、飼い主が病気になったり、一定期間出かける必要があったりと、やむを得ず人やペットホテルに預けなければならない状況も。

家の中ではちゃんとトイレでするし、外でも普通にできる。様々な状況に対応するためには、どこでも用を足すことができるようしつけておくのがベストといえるでしょう。

待て

犬の行動を制限し忍耐を覚えさせるという意味合いで使用されるのが「おすわり」「伏せ」「待て」など。中でも特に重要になるのが「待て」です。

といっても普段行うことが多いであろう、ご飯やおやつ時の“待て”ではありません。

  • 道路に飛び出しそうな時
  • 散歩中興奮して他の犬や人に飛びかかりそうな時
  • 買い物時などやむを得ず外に犬を待たせる時

仔犬や若い犬というのは突発的な行動を起こしがち。それは時に命に危険にさらされたり、他社に危害を加えたりといった恐れがあります。それを制止するという意味で重要なのが“待て”なのです。

一般的には「おすわり」や「伏せ」と絡めて教えることになるでしょうか。犬にとって伏せ状態の方が長時間待機しやすい体勢であるため、10分20分待たせることがある場合は伏せもセットで覚えさせるといいでしょう。

歯や爪の手入れ

愛犬の爪や歯の手入れはどこで行っていますか?トリミングの際や動物病院にお願いしているという人も多いことでしょう。しかし可能であれば飼い主本人が行いたいところ。特には。

犬は人間のように虫歯になることは稀ですが、歯垢や歯石に起因する歯周病に関しては人間と同様に起こります。

食事をすれば食べかすや菌により歯垢が作られ、それは2~3日ほどで歯ブラシでは取りきれない歯石になってしまいます。そういった理由から人間と同じように毎日歯を磨くことが望ましいのです。

子供の頃から歯を磨いたり爪を切ったりと、体のケアを飼い主に委ねる環境づくりが大事になります。

噛ませない

人間を攻撃しないこと…これは人と犬が一緒に生きていくうえで絶対に欠かせない要素です。

飼い主やその家族に対して噛むことはないけど、他人は噛んでしまう。人間は噛まないけど他の犬に対しては攻撃的になるなど、その形態は様々。しかしいずれもトラブルに発展する可能性が高い厄介なものに変わりありません。

ただし、噛み癖というのは性格や育ってきた環境、現在の環境など様々な要因が重なっているほか、犬の性格によってしつけ方も変わってくるやっかいなもの。

トイレや待てなどのしつけに比べ難易度は高く、しつけ方を間違えるとかえって悪化する可能性も。どうしても噛み癖が直らない場合はプロのトレーナーに相談することも考慮したほうがいいかもしれません。

しなくていいしつけも

犬に対するしつけとは人間と共存するために必要なことを教えることを意味しています。しかしこれをはき違えている人が多いという現実が。

例えば「おすわり」とセットで教えることも多い「お手・おかわり」。しつけの定番のような印象を受ける人もいるかもしれませんが、これはしつけではなく“芸(トリック)”です。2本足で立たせる「ちんちん」なども同様。

愛犬とのコミュニケーションの一環として教えるという考え方もありますが、別の見方をすれば飼い主の自己満足に過ぎません。人間と犬の共生にとって芸は必要ありませんからね。

犬は飼い主に褒められれば嬉しいもの。そのためお手やおかわりなどの芸を披露し褒められるのは嬉しいのかもしれません。そのためこれら芸を否定するつもりもありません。

しかし少なくともしつけではない。お手ができなくたってしっかりとしつけられている犬はごまんと存在します。

もしあなたがお手を“しつけ”と考えているのであれば、その考えは改めたほうがいいのかもしれませんね。

間違ったしつけ方は犬を不幸にする

間違ったしつけは犬を不幸に

人間と生活するうえで最低限のしつけは必要になります。しかし前述のように芸やトリックは必ずしも必要なものではありません。過度な芸の強要は犬にとって負担でしかないのです。

また、必要なしつけに関しても教え方を間違えば犬にとって大きなストレスになります。できないからと叱ったり叩いたり…度を過ぎれば虐待になりかねません。

“しつけ”とは、“人間との共生に必要なしつけ”を“正しい方法でしつける”という前提のもと成り立っています。そして理想のしつけ方とは痛みや恐怖によって教え込むのではなく“喜び”の感情を利用することに他なりません。

粗相をしたり言うことを聞かなかったりするとついつい怒鳴ったり叱ったりしがち。場合によっては叩いてしまうこともあるでしょう。そしてそれを“しつけ”と勘違いしている人も多数存在するのが実情。

犬との信頼関係や良好な関係を構築しつつ正しくしつけるためには痛みや恐怖を刷り込むしつけは極力排除すべき。それら間違ったしつけは犬を幸せにするどころか不幸にしてしまうのです。

犬には過不足ない適度なしつけを

犬が人間と共生するために覚えなければならないことはそれほど多くありません。

そもそも犬は人間とはまったく異なる生き物であるため、お互いの特徴を尊重しつつ最低限必要となるしつけを行えば十分なのです。

だからといって放任もダメ。必要なしつけをしなかったばかりに人を噛んだりすれば、最悪の場合被害者に損害賠償を請求されたり、保健所で殺処分になったりする可能性もゼロではありません。

待てを教えなかったばかりに急に道路に飛び出して車に撥ねられたり、迷子になってしまったりといった事態も。

必要なしつけをしっかりと行うのは飼い主の愛であり義務なのです。

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