犬の階段の昇り降りは足腰に負担
住まいが2階建て以上の一戸建てだったりアパート・マンションだったりする場合、飼っている犬が階段の昇り降りをするケースがあると思います。
散歩のときに人間と一緒に昇り降りをする、寝室が2階にあるため犬が勝手に階段を使って行き来する等。しかし可能であれば犬に階段の昇り降りはさせるべきではありません。
犬が階段を上ったり下りたりすることで想定されるリスクや、昇り降りをさせない・やめさせる方法とはどういったものなのか?
犬が階段の昇り降りをするリスク
犬が階段を昇り降りする行動には様々なリスクが付きまといます。
特に一戸建ての階段は限られたスペースの中に無駄なく階段を配置するため勾配が急になる傾向に。そんな階段を犬が日常的に昇り降りしていると、どんな弊害が考えられるでしょうか。
足腰への負担
人間より体が小さく、かつ4足歩行、加えて体が硬い犬にとって階段というのは大きな負担になります。その影響をもろに受けるのが足や腰。
上る時は腰を曲げ斜め上にジャンプするような形になり、下りは前足に全体重がかかり、腰に衝撃が伝わるという状況に。これは犬の体が小さければ小さいほど顕著です。特に下りは負担が大きいと見ていいでしょう。
ある程度の年齢になると人間でもしんどい階段の昇り降りを、4足歩行で体が小さい犬に行わせる…どう考えても無理があるのです。
これを長年にわたって毎日のように繰り返していれば、足や腰にダメージが蓄積されるのは想像に難くありません。実際に階段の昇り降りが椎間板ヘルニアや変形性関節症の原因になることも。
同様の理由からソファーから飛び降りるなどの行動もできるだけ止めさせたいところ。
転落の危険
犬が階段を昇り降りする中でもうひとつ怖いのが“転落”です。
アメリカの家であれば階段のカーペットで覆われているため滑りにくいものの、日本の一戸建ての階段のほとんどは木の板です。言うまでもなく非常に滑りやすいものになっています。
加えて、犬の肉球はしっとりしている猫のそれと違い硬く滑りやすいもの。フローリングの部屋で犬が滑る光景をよく目にしますよね。
そして日本の家屋は狭いことから階段は急斜面。そう、日本の一戸建てと犬の肉球は相性が非常に悪いのです。
それを見越して滑り止めを階段に設置しているならまだしも、もしそうでない場合は犬が階段から転落してしまうリスクが高まります。
上りではジャンプしようとした後ろ足が滑って、下りでは着地した前足が滑ってというパターンが大半。それを回避しようと体に変な力が入るとなおさら足腰に負担がかかる点にも留意したいところ。
階段からの転落や降りた衝撃により骨折してしまうというのはよくある話。特に骨が弱り体が硬くなっている高齢の小型犬は要注意です。
実録:愛犬に階段を使わせた結果の腰の曲がり
私が大人になって初めて飼った犬は黒パグでした。当初はアパートの1階に住んでいたため、階段の昇り降りをする機会はせいぜい公園の傾斜の緩い階段くらい。
しかし、愛犬が7歳の時に一戸建てに引っ越し、寝室が2階ということもあり犬は毎朝毎晩階段を昇り降りする状況に。もちろん毎日。
この時は私も階段の昇り降りの悪影響を考慮することもなく、転落防止のために滑り止めを設置しただけで、あとは自由に昇り降りさせていました。
しかしそれから2年後くらいに愛犬の腰が曲がってきたことに気付きます。緩いアーチ状といえば分かりやすいでしょうか。うちのパグは一般的な同犬種に比べちょっと胴が長かったことも影響していたのかもしれません。
ほどなくして足を痛がるような素振りをたまにみせるようになり、階段の昇り降りも嫌がるように。その愛犬の晩年は就寝時と起床時に私が抱っこして1階と2階を行き来するようになりました。
私が飼っていた黒パグの腰が曲がり、足の関節に痛みが出た理由が階段の昇り降りなのかどうかを断定するだけの明確な証拠はありません。
しかし、当家は犬がフローリングで滑り足腰に負担がかかることを憂慮し、引っ越して間もなくリビングや寝室、廊下にいたるまで、犬が通る・使用する場所にはすべて絨毯やカーペットを敷いています。
そのため、階段の昇り降りが足腰に負担をかけていたと考えるのが最も自然なのです。年齢による衰えももちろん大きいでしょうが。
足腰の不調の原因が階段であると言い切れないのは事実。様々な要素が重なっているのも理解できます。しかし「階段の昇り降りをさせなければ負担を減らせたかも…」という後悔は、愛犬が死んで数年経った今でも心に引っかかっています。
犬に階段を使わせない方法は?
犬の体にとって階段の昇り降りが負担になることは疑いようがありません。小型犬であればあるほどそれは顕著。そのため、愛犬のことを考えるなら“階段を使わせない”という方法がベスト。
そのための方法をいくつか挙げてみましょう。
階段のない家に住む
物理的に家に階段がなければ、愛犬が日常的に階段を使うという状況を回避できます。当たり前ですが。
具体的にはアパートやマンションの1階に住む、平屋に住むなど。2階建て以上であっても飼い主や犬の生活スペースが1階に限定されるのであれば同様の効果が期待できます。
ただし、住環境はそう簡単に変えることができないのが大きなデメリット。
階段に立ち入らせない
住まいに階段が存在しているとしても、物理的に階段に立ち入らせないことで昇り降りを回避するという方法があります。
具体的には階段の上り口や下り口に柵や簡易のゲートを設置方法。こうすることで犬は階段を使うことができなくなります。
人間の昇り降りの際にも柵をまたいだりゲートを開けたりと手間が必要になるのはデメリットではあるものの、愛犬をケガや負担のリスクから守ることを考えれば大した手間ではないはず。
使うのは主に人間の赤ちゃん用のベビーゲートか。安いものなら3,000円ほど、1万円も出せば様々な商品から選択できます。リサイクルショップで中古品を安価に手に入れるのも手。
階段の昇り降りを教えない
犬は階段の昇り降りを怖がるケースが結構あるんですよね。特に下りは。腰を悪くした私の黒パグも子供の頃は公園のなだらかな階段さえ怖がって上ろうとも下りようともしませんでした。
しかし、ある程度成長したところで当初階段を怖がっていた犬に昇り降りを教えたという経緯が。最初は1段1段ゆっくり下りられるようにし、徐々に慣れさせていきました。
しかし、今となってはそれが余計だったと感じています。
そのため、その犬が死んだあとに飼った別の黒パグには階段の昇降は一切させませんでした。必要な時は必ず人間が抱っこして昇り降りする形。これにより階段を前にしても上ったり下りたりすることはありません。
その後に2匹目のパグを迎え入れ2頭体制になりましたが、同様に昇り降りは人間が抱っこするように。先住犬となる黒パグが階段を昇り降りしないことも幸いし、このパグも階段を使おうとすることは一切ありません。
一戸建てなどの狭く急な階段は犬にとっても恐怖の対象であり、人間があえて昇り降りを教えない限り使おうとしないことも多いのです。
教えようが教えまいが大人になるにつれ階段を使うようになる犬もいるでしょう。しかし「階段は人間が抱っこして昇り降りするもの」ということを染みつけることで階段を使わない犬に育つ可能性も十分あるのです。
愛犬に階段の昇り降りをさせたくない場合は、子供の頃から家の階段はもちろん、外出時の階段も昇り降りをさせず必ず人間が抱っこして移動するようにしてみてください。
もちろん抱っこできる大きさの犬に限られてしまう話ですが…
愛犬のことを考えるなら階段は使わせない
飼い主によって階段に対する考えは異なります。犬に階段の昇り降りを覚えてほしいと考える人もいれば、安全面や健康面のリスクを考え「昇り降りさせたくない」と考える人もいるでしょう。
確実に言えることは、犬にとって階段の使用は決してプラスにならないという点。人間であれば階段昇降を行うことで筋力アップを図れるかもしれませんが、4足歩行の犬にとって急な階段は負担でしかありません。
階段というものは2足歩行である人間のみに適応した仕組みなのです。
特に小型犬は要注意。大型犬であれば段差に対して体の大きさに余裕があるため悠々と昇り降りできるのに対し、小型犬は体が小さいため1段1段の昇り降りの大きな動作が必要に。それが体への負担に直結します。
世間一般的にはミニチュアダックスフンドやコーギーのような胴長の犬種の場合、階段を使わせると腰に負担がかかるとされています。しかしこれら犬種に限らず足腰への負担は必ずあると見るべき。
愛犬の健康を第一に考えるなら、食事の内容や運動に加え、“階段の昇り降りをさせない”という選択も視野に入れてみてください。
あわせて読みたい関連記事
家族の一員と言っても過言ではない犬。できれば長生きしてほしいですよね。一口に犬と言ってもその種類は様々で、犬種によって平均寿命には大きな差も。どんな犬種が長生きするのかについて信用できるデータを紹介します…続きを読む
自宅の階段、愛犬に昇り降りさせていませんか?広さが限られる1戸建ての階段は急勾配であることが多く犬にとって大きな負担に。場合によっては椎間板ヘルニアや変形性関節症の原因にも。それを避けるための方法や工夫にはどういったものがあるのか…続きを読む
犬を飼っている人には一緒に寝ているという人も多いことでしょう。しかし一方で「犬と飼い主は一緒に寝てはいけない」という話を聞いたことはありませんか?一緒に寝るのは本当にダメなのでしょうか?いいえ、決してそんなことはないのです…続きを読む
近年、家のほとんどの部屋はフローリングという人も多いことでしょう。掃除しやすくおしゃれなフローリングですが、犬にとっては悪影響が目立ちます。特に関節や足腰への負担は大きく、変形性関節症や椎間板ヘルニアの原因になることも…続きを読む
噛み癖がある犬を飼っている場合、目を離した隙に他人やを噛んでしまうことも。そういった場合自治体の条例により最悪殺処分になる可能性があります。とはいえよほどひどい事故でない限り殺処分になる可能性が低いのも確か…続きを読む
最近犬に靴下や靴を履かせる飼い主さんが増えてきています。ネット上などでも暑さや寒さ対策やフローリングの滑り対策に有効なんて意見も。しかしそれは詭弁。靴下や靴はデメリットばかりが目立ち愛犬に負担を強いる結果に…続きを読む
愛犬が私たちの膝の上で気持ちよさそうに寝ている…癒されますよね。しかし一方でその行動は飼い主を馬鹿にしているからという意見も。犬が人間の上に乗る行動はやめさせた方がいいのか?やめさせた方がいいケース、問題ないケースとは…続きを読む
犬を外で飼うのが当たり前だった昔と違い、現在の犬は人間の生活に深く食い込んでいます。それだけに“しつけ”の重要度は増しています。しかし実は教えるべきことはそれほど多くありません。しつけをはき違えていると犬を不幸にする可能性も…続きを読む
多くの航空会社では飛行機に搭乗する際、犬も乗せることができます。しかしブルドッグやフレンチブルドッグなどの短頭種は制限が。特に気温が高い夏季期間は多くの航空会社が搭乗中止に。航空各社の具体的な対応を見てみましょう…続きを読む
人間であれば食べても問題ない食べ物でも犬が食べると毒になるものが存在し、チョコレートもそのひとつ。具体的にどの程度の量を食べると中毒症状を呈するのか?問題にならない量や飼い主ができる対処法などを詳しく見ていきましょう…続きを読む
様々な料理に使用する玉ねぎですが、犬にとっては中毒症状を引き起こす非常に危険な存在です。どの程度の量を食べると中毒が起きるのか?また致死量は?万が一食べてしまった際の対処法や玉ねぎ料理の注意点など気になる点を解説していきます…続きを読む
ドッグフードが無くなったから代わりにキャットフードを与えた、犬が猫のエサを横取りして食べてしまった…そんな経験はありませんか?一見して大きな違いはないため犬がキャットフードを食べても問題なさそうに感じますが、実際はどうなのか…続きを読む
人間に比べ犬は比較的よく吐く動物です。そのため愛犬が嘔吐しても「ああ、また吐いてる」と気にも留めない飼い主さんもいるかもしれません。確かに問題ないことが多いのも事実ですが、中には重大な病気が隠れているケースも…続きを読む