犬がキャットフードを食べると危険?
犬を飼っている人の中には猫も一緒に飼っているという人も多いことでしょう。そしてドッグフードがなくなったことに気付いた時「ドッグフードを買ってくるまでキャットフードでもいいかな」なんて思ったことはありませんか?
犬も猫も4足歩行の身近な動物。キャットフードもドッグフードも見た目は似ていることもあり、ついキャットフードを食べさせてしまったというケースもあるのではないでしょうか?
しかしその行為、できれば避けるべきです。
犬にキャットフードを食べさせてはいけない理由とはどういったものなのか、詳しく解説していきます。
犬がキャットフードを食べてはいけない理由
犬にキャットフードを食べさせてはいけないのはペットに携わる人間からすれば常識。では理由は配合されている栄養や味付けにあります。
必要な栄養が異なる
犬と猫はどちらも人間にとって身近な存在ながら、動物学的な分類では犬は「食肉目イヌ亜目イヌ科イヌ属」に属し、猫は「食肉目ネコ亜目ネコ科ネコ属」に属しています。どちらも食肉目(ネコ目)ながら分類は大きく異なります。
そのため必要な栄養素や体内で合成できる成分が異なり、各々のフードはそれを補うような配合、バランスになっているのです。
その代表的なものがアミノ酸。
動物によって体内で合成できるアミノ酸は異なり、体内で合成できないアミノ酸は「必須アミノ酸」として食物から摂取する必要があります。
この必須アミノ酸、人間であれば9種なのに対し、犬は10種、猫は11種となっています。下表がその内訳。〇が必須アミノ酸、×が非必須アミノ酸になります。
人間 | 犬 | 猫 | |
---|---|---|---|
ロイシン | 〇 | 〇 | 〇 |
イソロイシン | 〇 | 〇 | 〇 |
バリン | 〇 | 〇 | 〇 |
リジン | 〇 | 〇 | 〇 |
メチオニン | 〇 | 〇 | 〇 |
フェニルアラニン | 〇 | 〇 | 〇 |
スレオニン | 〇 | 〇 | 〇 |
トリプトファン | 〇 | 〇 | 〇 |
ヒスチジン | 〇 | 〇 | 〇 |
アルギニン | × | 〇 | 〇 |
タウリン | × | × | 〇 |
犬は体内でタウリンを合成できるのに対し、猫はタウリンを合成することができません。つまり猫にとってタウリンは必須アミノ酸であり、食事によって摂取する必要があります。
このため、キャットフードには必ずタウリンが配合されています。
一方、犬は体内でタウリンを合成できるとあって、キャットフードを食べることによってタウリンを過剰に摂取してしまう恐れも。ただしタウリンは多く摂取しても尿として排出されるため、あまり心配する必要はありません。
ただし、タウリンはあくまでも犬と猫の栄養の違いを端的に表した典型的な例であり、それ以外の様々な栄養に関しても必要量というのは大きく異なってきます。
ドッグフードは犬にとって最適な栄養バランスが考えられており、キャットフードもまた然り。そのため犬にキャットフードを食べさせると栄養バランスが偏ってしまうのは想像に難くないと思います。
愛犬の成長や健康を第一に考えるなら、キャットフードを食べさせるべきではありません。
キャットフードは味付けが濃い
犬と猫両方を飼ったことがある人であれば、どんなものでも食べてしまう犬に対し猫は好き嫌いが激しいことを実感していると思います。
犬は雑食であることもありよほど不味いものでない限りどんなものでも食べてしまう一方、純粋な肉食動物である猫は好みの範囲が狭いため「美味しい」と感じるものでないと食べてはくれません。
そういった背景からキャットフードはドッグフードに比べ味を重視して作られています。キャットフードは多くの猫が好んで食べるように濃い味付けで美味しく作られているのです。
そのためキャットフードはドッグフードに比べ塩分やカロリーが多い傾向にあり、ドッグフードと同じ量のキャットフードを犬に食べさせてしまうと塩分過多になったり太ってしまったりといったことが考えられます。
また、美味しさになれてしまうという問題も。
ドッグフードに比べ味を重視して作られているキャットフードを日常的に犬に食べさせてしまうと、その味に慣れドッグフードを食べなくなってしまう可能性も。
犬に必要な栄養バランスを考えて作られているドッグフードを食べず、栄養バランスが異なるキャットフードを好んで食べるようになってしまう…愛犬の健康にとって由々しき問題となるのは想像に難くないと思います。
犬がキャットフードを食べてしまった時の対処法
犬にキャットフードを食べさせるべきでないのは間違いないものの、気付いたらドッグフードがなくなってしまったためキャットフードを食べさせてしまった、猫のご飯を犬が奪い取って食べてしまったというケースもあることでしょう。
そういった場合はどう対処すればいいのでしょうか? 万が一食べてしまった場合は吐かせた方がいいと感じる飼い主さんもいらっしゃるかもしれません。
犬が食べることは望ましくないキャットフードですが、毒となりうるタマネギやチョコレートほど深刻に考える必要はありません。
犬が食べることを想定していないキャットフードといえど、犬がちょっと食べてしまったからといって問題になることはないのです。
例えばドッグフードがなくなってしまったから新たに購入するまでの1週間キャットフードを与えてしまったという場合においても、特に問題になることはないと考えていいでしょう。
例えるなら人間が栄養の偏った食事を1週間続けた程度のもの。この程度で体に不調を訴える人はまず存在しませんよね。
種が違うとはいえ猫の栄養バランスをしっかりと考えられたものである以上、犬がキャットフードを食べることは弁当やジャンクフードばかりを食べる人間よりかはマシという考え方も。
もちろん犬にはドッグフードを与えるのが理想である点は疑いようがありません。しかし数日間キャットフードを与えたからといって問題が起きることはまず考えられないのです。
そのため無理に吐かせるなどといった措置は必要ないでしょう。
ただし、愛犬に何らかの食物アレルギーがあったり、何らかの病気に対する特別なフードを食べさせている場合は要注意。そういったケースでは短期間においてもキャットフードを食べさせるべきではありません。
健康な犬であればキャットフードを短期間食べたところで問題になることはないでしょう。とはいえドッグフードが理想であることは疑いようがないため、愛犬の健康を第一に考えるのであればキャットフードは食べさせないようにしましょう。
猫がドッグフードは大丈夫?
ここまで犬がキャットフードを食べてしまったと想定した内容を紹介してきましたが、その逆のケースも考えられますよね。そう、猫がドッグフードを食べてしまうパターンです。
好き嫌いの激しい猫であれば味がたんぱくなドッグフードを与えても食べないだろう…と思いきや、お腹が空ていると猫でもドッグフードを食べてしまったりするんですよね。
以前、犬と猫を飼っている人と話をしていた時、犬が死んでしまって余ったドッグフードを猫に与えている…なんてことを聞いた覚えも。
しかし当然ながらこれもおすすめできません。
前述したとおり猫の必須アミノ酸には犬が非必須とするタウリンが含まれています。犬は体内でタウリンを合成できるためドッグフードに入っている量は少量もしくは配合されていない場合がほとんど。
これを猫に食べさせるとタウリン不足を引き起こす可能性も。
タウリンには血圧やコレステロールの量をコントロールしたり目の機能を維持したりする作用があります。タウリンが少ないドッグフードを猫が日常的に食べることで健康に悪影響が出てくる可能性の否定できません。
こちらも短期間食べるだけであれば問題になることはないため、ご自分が猫にドッグフードを与えないのはもちろん、そういった話を見聞きした場合は危険であることを飼い主さんに伝えて挙げるようにしましょう。
犬とキャットフードのまとめ
ドッグフードもキャットフードも見た目に大きな差異はなく、またどちらもペットに与える食事ということで犬にキャットフードを与えてしまっている人もいるかもしれません。
しかし、犬と猫では必要な栄養が異なり、各フードはそれに合わせて作られています。そのため犬にキャットフードを与えるのは避けてください。
とはいえ、キャットフードは犬にとってもある程度バランスの取れた食事であることも事実。毒になるようなものではないこともあり、短期間であれば問題になることはないでしょう。
ドッグフードが無くなっていることに気付き、かつ時間的にどうしても買いに行けないという場合は、やむなくキャットフードを与えるという程度であれば問題ありません。
キャットフードは味がしっかりしているため犬にとっては大喜びかと。もちろん推奨はしませんが。
犬にはそれに合ったドッグフードを与えるべきですが、だからといってキャットフードを過剰に恐れる必要はない…そういう結論になります。
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