犬に玉ねぎを食べさせても大丈夫?

犬にとって玉ねぎは毒

単体で食べることはほとんどありませんが、カレーやハンバーグ、野菜炒めなどなど様々な料理に利用する玉ねぎ。栄養面でも優れているため人間にとっては欠かせない野菜ですが、犬にとっては有害となります。

ネギ類が犬にとって危険な食べ物であるという認識をお持ちの飼い主さんは多いと思います。愛犬が届かない場所に保管し、料理中も落とさないように気を付けていることでしょう。

しかし、他のネギ類に比べ料理に使用する頻度が高く、かつ溶けてしまっている場合も多い玉ねぎは特に要注意。もっとも犬が口にしやすいネギ類といえるのです。

万が一愛犬が玉ねぎを口にしてしまったらどうすればいいのか? 中毒症状や致死量となる量は? 玉ねぎと犬に関する気になる点を検証します。

    目次
  1. 犬にとって玉ねぎはどう危険?
  2. 玉ねぎの中毒症状は?
    1. 症状が出るまでの時間は?
  3. 中毒症状を引き起こす量と致死量
    1. 玉ねぎ中毒が起こる目安の量
    2. 玉ねぎの致死量
  4. 犬が玉ねぎを食べた場合の対処法
    1. 吐かせる
    2. 様子を見るという選択肢も
  5. 料理に溶けた玉ねぎに要注意
  6. 犬に玉ねぎは絶対ダメ

犬にとって玉ねぎはどう危険?

玉ねぎが犬にとって毒だということを知っている飼い主さんは多いことでしょう。しかしその理由を知っている人は少ないのではないでしょうか?

玉ねぎが犬にとって有害である理由、それはネギ類が持つ独特の香りに由来しています。玉ねぎの香りをもたらす物質の中にはアリルプロピルジスルファイドや硫化アリルが含まれており、これらが中毒症状を引き起こします。

その作用は赤血球のヘモグロビンを破壊するという恐ろしいもの。

人間は硫化アリルなどの作用を無効化できるため玉ねぎを食べても問題ありませんが、犬が玉ねぎを口にすると赤血球が破壊され溶血性貧血や血尿を引き起こし、摂取量が多くなると死に至るケースも。

注意したいにはこれらの症状は犬に限らず猫やウサギ、牛、馬、羊など幅広い種で起こるという点。特に猫は飼っている人も多く、犬以上にどこにでも自由に行き来できるため、行動範囲に玉ねぎやそれを使用した料理を置かないようにしたい。

玉ねぎの中毒症状は?

玉ねぎの中毒症状

玉ねぎの中毒症状はチョコレートなどと違い血液を破壊するため、貧血やそれに伴うふらつきなどが出やすいという特徴があります。

犬が玉ねぎを口にしてしまった場合の主な中毒症状は以下の通り。

  • 溶血性貧血
  • 血色素尿(血尿)
  • 嘔吐
  • 下痢
  • 発熱
  • 呼吸困難

出やすい中毒症状は嘔吐や下痢、そして溶血性貧血。元気がなくなったり嘔吐や下痢の症状が見られたりする場合は要注意です。

そういった場合は犬の歩行や歯茎など粘膜の色も確認しておきたい。玉ねぎ中毒により貧血が起こると、ふらついたり粘膜の色が白っぽくなったりするからです。このあたりは人間の貧血と同様ですね。

玉ねぎを食べた量が多量になると血尿が見られる場合も。

症状が出るまでの時間は?

犬が玉ねぎを食べた場合にみられる症状の多くは上記のようになっていますが、ではこれらの症状は玉ねぎを食べてからどのくらいの時間で出てくるのか?

一般的な中毒症状は数分から数時間後に出るものがほとんど。しかし玉ねぎ中毒は必ずしもそうではありません。特に貧血や血尿は数日してから現れる場合も。

「玉ねぎを食べてしまってから半日様子を見たけど問題なかったから大丈夫」とは決していえないのが玉ねぎの中毒症状なのです。

中毒症状を引き起こす量と致死量

愛犬が玉ねぎを食べてしまった場合、どの程度の量だと危ないのか気になるところですよね。危険な量が分かっていれば食べた量によって病院に行くかどうかの判断もできますしね。

しかし、どの程度の量で中毒症状が出るのかは個体差が非常に大きく、一概に「この量だと危ない」と言い切れないのです。

ただし、どのくらいの量を食べると中毒症状が出やすいのかを調べる研究や実験が行われています。危ない量の目安を知るためにもその研究の内容を少し見てみましょう。

玉ねぎ中毒が起こる目安の量

玉ねぎ中毒により貧血が起こる量の目安はいくつかの研究により示されているものの、ある程度の幅があります。ある実験においては犬の体重あたり5~10g/kg、別の研究においては15~20/kgといったものに。

つまり体重5kg程度の小型犬であれば、玉ねぎの摂取量が25gを超えると貧血などの中毒症状が出やすくなると解釈できます。一般的な玉ねぎの重さは1個200g程度とされますから、小型犬であれば8分の1でも危険ということに。

ただし、犬の玉ねぎに対する許容度の差は非常に大きく、みじん切りを数欠片与えただけでも中毒症状を引き起こす犬がいる一方、かなり大量に投与しても平気なケースも。

玉ねぎの致死量

玉ねぎ中毒は個体差が大きいとはいえ30g/kgの玉ねぎを複数の犬に3日間与えた実験においては、すべての犬に重度の貧血や血尿が起こり、中には死亡する個体も。

30g/kgというと体重7kgの犬が玉ねぎ1個を食べてしまう量に相当。チワワやポメラニアン、ヨークシャーテリアのように体重が2~3kg程度しかない犬種は4分の1程度でも危険ということになります。

これは連続投与の実験であるため、この量を1度食べただけで死に至るとは言い切れませんが、少量の摂取により死んでしまう例もあるため、1欠片たりとも食べさせないという心がけが重要といえるでしょう。

犬が玉ねぎを食べた場合の対処法

玉ねぎを食べてしまった際の対処法

万が一愛犬が玉ねぎを食べてしまった場合はどうすればいいのでしょうか?

基本的にはすぐに動物病院に連れていくべきです。少量でも死に至る可能性がある以上、玉ねぎを食べてしまったことが判明した時点で早急に動物病院に連れていくべきでしょう。

しかし、一般的に動物病院は夕方ごろに閉まってしまうのがほとんど。緊急外来を受け付けてくれる病院が近くにあればいいですが、そういった動物病院が存在しない場合は自分でできる対処法も。

吐かせる

玉ねぎを食べてしまった時間がはっきりしており、かつそれが2時間以内であれば吐かせるのがベストになります。ただし間違った方法を用いるとかえって危険である点にも留意しておくべき。

飼い主が自身で吐かせる場合、塩を用いる方法とオキシドール(過酸化水素水)を用いる方法が紹介されていますが、塩は量を間違えると非常に危険であるため、可能な限理オキシドールを使用するようにします。

飲ませる量は体重1kgあたり1ml。料理に使う小さじ1杯が5ml、大さじ1杯が15mlなので、体重が2~3kgである場合は小さじ2分の1、30kgであれば大さじ2杯といった量になります。

オキシドールを水のように自主的に飲ませようとしてもほとんど不可能であるため、スポイトなどを使用し喉の奥に直接注入するようにしてください。

一般的にはオキシドールを飲ませると数分程度で嘔吐します。もし10~15分経っても嘔吐しない場合は再度同量のオキシドールを飲ませてください。ただし回数は最大3回までとします。

様子を見るという選択肢も

玉ねぎのみじん切り数欠片程度でも危ないという意見がある一方で、少量であればあまり心配する必要がないという獣医師の意見も。

中毒症状の試験においても比較的多量の玉ねぎを数日間にわたって連続投与しており、少量を単発であればほとんど問題ないという見方も多くなっています。

食べた量がごく少量で、かつ摂取してからすでに数時間が経過している場合は様子を見るのもひとつの手です。多くの場合症状が出ることはないでしょう。

そもそも玉ねぎを消化してしまうほど時間が経っている場合は病院に連れて行ったところでビタミン剤や強心剤、利尿剤の投与など対症療法しかやることがありません。玉ねぎの解毒剤は存在しないのです。

そのため、病院が始まる時間まで様子を見たうえで、何らかの症状を呈している場合は獣医師の判断を仰げばいいのではないでしょうか。

もちろん、ある程度の量を食べているのであれば早急に動物病院に連れていくべきであるのは疑いようがありません。

料理に溶けた玉ねぎに要注意

料理に溶けた玉ねぎに要注意

薬味や限られた料理に使うことがほとんどの長ネギであれば万が一愛犬が口にしてしまっても分かりやすいでしょう。量の判別も容易です。しかし玉ねぎは状況が大きく異なります。

というのも玉ねぎの調理は多岐にわたり、生で食べるサラダから原形をとどめた玉ねぎステーキや炒め物、牛丼など、そして時間と共に料理に溶けてしまうカレーやシチューなどバリエーションが豊富です。

特に問題になるのは原形がなくなってしまう煮込み系の料理。犬がシチューを食べてしまっても玉ねぎをどの程度摂取したのか分かりにくく、場合によっては玉ねぎを摂取してしまったと認識しない飼い主も存在することでしょう。

しかし玉ねぎの毒性は加熱したところで消えないとされます。犬が中毒症状を引き起こす原因物質のひとつ「アリルプロピルジスルファイド」は原形を留めていなくても存在するのです。

カレーやシチュー、肉じゃがなどの煮物系以外にも玉ねぎドレッシングや玉ねぎスープなど原形を留めていないものの成分がしっかりと入ったものは数多く存在します。

玉ねぎは原形がなくても危険だということを絶対に忘れないでください。

犬に玉ねぎは絶対ダメ

ユリ科のネギ属には長ネギや玉ねぎをはじめ、ニンニクやラッキョウ、リーキなど様々な食品が含まれていますが、断トツで危険なのは様々な料理に使い、かつ原形がなくなっても毒性を失わない玉ねぎです。

そのため、犬が届かない場所に玉ねぎを補完するのはもちろん、玉ねぎを使った料理の取り扱いにも注意するべき。

一方でアメリカなどではドッグフードや犬用サプリメントに同じく犬に有害とされるネギ類のニンニクが配合されているケースも多いんですよね。少量であれば虫よけ効果や健康効果があるとか。

国によって進化や遺伝子が異なるのかもしれませんが、少量程度で騒ぎ立てるのは過剰反応だという声があるのも確か。とはいえ中毒症状を引き起こす可能性があるものをわざわざ食べさせる必要性は一切ないと考えます。

犬が何を食べるかは飼い主の一存によって決まります。万が一玉ねぎを使った料理などを口にしてしまった場合においても、飼い主の管理責任に問題があるといわれればそれまでです。

愛犬を守るためにも、玉ねぎの扱いには細心の注意を払うようにしましょう。

あわせて読みたい関連記事

カテゴリ一覧