ドッグフードに4Dミート!?ネットの嘘に注意

ドッグフードに4Dミートは危険?

「安いドッグフードには4Dミートが使用されているため危険」。ネット上でそんな噂を目にしたことはありませんか?特に顕著なのは多くのドッグフードを紹介・評価しているサイト。

粗悪な材料とされる4Dミート。これってどんなものなのでしょうか?また、安いドッグフードには本当に4Dミートが使用されているのでしょうか?

あたかも真実のように書かれている4Dミートの噂について色々と調べてみると、そこには多くの嘘と裏があることが見えてきました。

    目次
  1. 4Dミートとは
  2. 4Dミートの嘘
  3. 事故で死んだ犬や猫の肉をドッグフードに使用?
  4. ドッグフードに4Dミートは使われている?
  5. そもそも4Dミートは危険なのか?
  6. 4Dミート論の裏にある金の匂いに注意
  7. 4Dミートのまとめ

4Dミートとは

インターネットで「4Dミート」と検索すると多くの結果を吐き出してくれることでしょう。犬の健康に配慮する飼い主であれば知らないほうが珍しいかもしれません。

そんな4Dミートはその名が示す通り4つのDの頭文字が付く肉を指します。いわゆる最低ランクの肉を表しており、内訳を見てみると…

  • Dead:死んだ動物の肉
  • Diseased:病気の動物の肉
  • Dying:死にかけた動物の肉
  • Disabled:障害を持った動物の肉

いかにも嫌な感じの文字が並んでいます。ひとつずつ簡単に説明しておきましょう。

Dead:死んだ動物の肉

まずは死骸・死体を表す「Dead」。

「食べ物や肉として使用するんだから死んでいて当たり前だろう」と考えてしまいますが、ここでの死骸というのは肉として使用するための屠殺(とさつ)とは違い、何か別の理由により死んだ動物を指しているようです。

例えば病気であったり事故であったり、生産者が意図せず死んでしまった家畜の肉を使用しているという意味合いがあります。

Diseased:病気の動物の肉

4Dミートには病気になった動物の肉も使われるとされます。

私達人間が食べる肉というのは食肉になるまでに複数回の検査が行われ、病気にかかった家畜は異常部位の一部廃棄もしくは全部廃棄となります。見落としがないと仮定した場合、重大な病気を持った肉は市場に出る前に弾かれることに。

しかし最低ランクの肉である4Dミートには病気にかかった家畜の肉も使用されているとのこと。つまり人間は口にしないであろうレベルの肉ということに。

Dying:死にかけた動物の肉

4種類ある4Dミートの中でも異彩を放っているのがこの「Dying:死にかけた動物の肉」。「死にかけってどういうこと?」と感じてしまいますよね。

病気や何らかの理由などで死にかけている家畜のことを指しているという意見や、屠殺により完全に死んでしまう前に加工されることを意味しているという見方も。どうやら人によって見解が異なるらしい。

他の4Dミートの項目との整合性を考慮すると“死が現実味を帯びるほど不健康な動物の肉”と見るのが自然でしょうか。

Disabled:障害を持った動物の肉

最後は「Disabled:障害を持った動物の肉」。身体的・知的な障害を持った家畜の肉を使用しているということになります。

これらの障害を持っていたからといって犬に何らかの影響を与えることは考えられませんが、気分的によくない…ということらしいです。


4Dミートとはこれら4つの家畜の肉の総称。人間であれば絶対に口にしないであろう肉ということで批判の対象になっているのです。

4Dミートの嘘

アメリカでは米国農務省農業市場流通局(USDA/AMS)によって牛に関する等級が規定されており、一部サイトにはそれは以下の8つだという記述が見受けられます。

等級 解説
Prime(プライム) 霜降りやテンダーカットなど最上級の肉
Choice(チョイス) プライムには劣るが上級な肉
Grade A(グレードA) 標準的な肉
Commercial(コマーシャル) ひき肉用の肉
Utility(ユーティリティ) サンドイッチやホットドッグ用の肉
Cuttings(カッティングス) 缶詰用などの低級肉。人間用として最低ランク
Other Use(アザーユース) 人間用としては使用禁止の低級肉
Grade D(グレードD) 死骸や病気、障害などを持つ牛の肉

この中で最低となるグレードDがいわゆる4Dミートなのだともっともらしく語られています。確かにグレードDの内容は前述した4Dミートそのままですよね。

しかし実際にUSDAが規定している肉の等級は以下の通り。

  • プライム
  • コマーシャル
  • チョイス
  • ユーティリティ
  • セレクト
  • カッター
  • スタンダード
  • キャナー

これらの等級は牛の種類は性別、成熟度、脂肪交雑などによって決められています。基本的には肉質がよくサシ(脂肪)が多く入っている霜降りの肉ほどグレードが高くなります。

これを見れば分かるように「グレードD」なんてものは存在せず、かつ死骸や病気、障害といった4Dミートに関する記述すらない。そういった等級は存在しないのです。

アメリカによる上記の等級付けは若干の変更を加えながらも長きにわたって運用されています。つまりグレードDなんてものはそもそも存在しておらず、それは過去にさかのぼっても同様。

どこからこんな嘘情報が出てきたのでしょう?

当然ながら日本に4Dなんて肉の等級やグレードは存在しません。前述のグレードDという等級が存在する嘘の格付け元はUSDAと書かれているため、出所はやはりアメリカになるのでしょう。

4Dミートは都市伝説

日本のサイトにおいて4Dミートをいくら調べてみても判を押したように同じことしか書いていないため、本国であるアメリカの情報を得るために英語でグレードDの牛肉について検索してみました。

英語で検索してもグレードDに関する情報はほとんど出てこないものの、ひとつ興味深い記述を見つけました。それは人の食用に適していないグレードDの肉に関する伝説がある大学から始まったというもの。

ペットフード用であるグレードDの肉が一部の食品や飲食店などで提供されているのではないかという噂が存在したというのです。

しかしそれはもちろん嘘。日本に数多ある都市伝説や噂と同様のものなのです。そしてアメリカにはそういった謎の肉のジョークがたくさんあると締めくくられています。

ちなみに本国であるアメリカには4Dミートに関する情報は一切見当たりません。当然ながら日本にもそんな等級は存在しません。つまり誰かが憶測で作りだした造語であり、これもまた都市伝説のひとつなのです。

事故で死んだ犬や猫の肉をドッグフードに使用?

ドッグフードに犬猫の死骸が使われる?

4Dミートに関連して車に轢かれたり安楽死させられたりした犬や猫といった動物の肉もドッグフードに使われているという記述をよく目にします。

しかしほとんどのサイトはこれに関する根拠を挙げていません。唯一この情報の根拠として書かれているのが、徳島市や鳴門市などが路上で死んだ犬猫の死骸処理を一般廃棄物処理の許可がない肉骨粉加工業者に委託していたという報道。

…え?これだけ?

確かにドッグフードには肉骨粉が使用されることがあります。しかしこの報道は一般廃棄物処理の許可はないが死骸処理を得意とする業者に犬猫の死骸の処理を委託していたという話であり、その死骸が肉骨粉に使われた根拠には一切ならない。

もちろんその業者が製造する肉骨粉がドッグフードに使用されたという根拠にも。つまり完全な憶測で「ドッグフードに犬猫の死骸などが使われている」と書いているのです。

根も葉もない4Dミートの話を含め、高いドッグフードを売るためには話を捏造するその根性には辟易します。

ドッグフードに4Dミートは使われている?

肝心のドッグフードに4Dミートが使われているのかどうかの問題。この4Dミートを「レンダリングされた家畜」と定義するなら4Dミートが使用されている可能性はあるということになります。

このレンダリングとはどういったものなのか?

レンダリングとは

レンダリングとは牛や豚などの家畜から食用となる部分を除き、残った脂肪などを溶かして油脂にしたり肉骨粉にすることをいい、油脂は牛脂やラード、石鹸などの原料に。牛や豚、鶏といった家畜の肉骨粉は飼料や肥料に使用されます。

畜産の副産物という位置付けになり、家畜の部位を余すことなく使用するという観点からも必要不可欠な事業となります。

このレンダリングによって製造された肉骨粉などの粉末はチキンミールやポークミールといった名称で使用されることに。そしてこれらチキンミールやポークミールを使用するドッグフードは安価なものを中心に多数存在するのです。

とはいえ、ここまでの話の中でレンダリングされた肉骨粉や油脂と4Dミートを結びつける要素はありませんよね。しかしあるのです、これらを関連付ける証拠が。

下図は農林水産省によって定められたペットフード用肉骨粉等の取扱い。

4Dミートはドッグフードに使われる?

これを見ると農場から出た豚や馬などの死亡家畜等をレンダリングによってペットフード用の肉骨粉やミール等に加工し使用できる旨が明記されているのが確認できると思います。

死亡家畜…そう、食肉にするのための屠畜以外で死んだ肉のこと。4Dミートの定義のひとつである「Dead」に当てはまるのです。

もしこの死亡家畜に病気や障害を持った豚や鶏などが含まれているとしたら、多くのペット関連サイトが書いているように4Dミートが使用されていることに。

安価なドッグフードを中心に使用されるチキンミールやポークミールが4Dミートとは限りませんが、4Dミートである可能性も捨てきれない…そういう結論になるでしょうか。

そもそも4Dミートは危険なのか?

誰が言いだしたか分からないがネット上に溢れる4Dミートの文字。安価なドッグフードはその定義に当てはまるかもしれない原材料を使用している可能性もゼロではありません。

しかし、いわゆる“4Dミート”がドッグフードに使用されているとして、それは愛犬の健康を脅かす危険なものなのでしょうか?結論から言えばNOです。

4Dミートは添加物や薬品を多量に使用しているとか、粗悪な肉だから体に悪いとか散々な書かれようですよね。しかし内臓や骨、肉など様々な部位が使用されている分栄養価は肉単体より高いという考え方もできます。

また、これらはドッグフード以外にも飼料として使用されています。私たちが普段口にしている牛や豚もレンダリングされた肉骨粉やチキンミールなど食べて成長し、そして食肉になっているのです。

仮にその中にいわゆる4Dミートが含まれており、それが家畜にとって危険だというのであれば、それを口にする私たちもまた危険ということに。そこまで言い出したらもはや肉など食べられません。

肉骨粉やチキンミール、ポークミールなどは製造時に高温で処理されていること、狂牛病(BSE)の危険部位は取り除かれていることなどから考えても、これらが危険と判断するのはあまりにも早計です。

ミールや肉骨粉で健康被害が出たというデータはない

日本やアメリカなど様々な国においてドッグフードの質に対する議論が存在します。「粗悪な材料を使っているから健康に悪い」「安いドッグフードでも犬は長生きしている」などなど。

しかし、それらの意見はすべて推測。安価なドッグフードとプレミアムドッグフードを一生涯にわたり使用して得たデータなど存在しないのです。みんな勝手に決めつけて勝手に意見しているに過ぎない。

そう、結局は自己満足の世界なのです。

どこ産のどんな食材を使っているかも分からない飲食店での外食が多いにもかかわらず、たまに家で食べる時だけ国産や無農薬にこだわる的外れな人っていますよね。あれと共通する違和感を覚えます。

やれ人工調味料や人工甘味料は良くない、電磁波が体に悪い、菜食主義が至高などなど、各々の価値観を押し付け合っている印象しかありません。

とはいえ、愛犬に少しでも良いものを食べさせたいと考えるその思考は理解できます。そして死亡家畜の肉が使われている可能性がある安いドッグフードは与えたくないという心理も。しかしそれとレンダリングされたミールが危険かは別の話。

そもそも「何が入っているか分からない」とか言いだしたら、高級プレミアムドッグフードの肉だって4Dミートが使われている可能性がありますよね。レンダリングされたものではないというだけで。

結局は企業の良心をどこまで信用できるのかという問題。本当に愛犬に納得できるものを食べさせたいのであれば、人間用の肉や食材などを自分で調理して与えるのが一番だと思います。

4Dミート論の裏にある金の匂いに注意

4Dミートの記事は金になる

ここまでは4Dミートについての定義や安全性、考え方について書いてきました。その良し悪しや内容はさておき4Dミートに対し私なりに正面から向き合った意見といったところでしょうか。

しかし、ここで4Dミートについて重要な別の視点についても取り上げておく必要があります。それは4Dミートの噂や都市伝説を利用して金を稼ごうとしているサイトが非常に多いという点。

具体的には市販のドッグフードには4Dミートが使われている可能性があると飼い主の恐怖を煽り、高価なドッグフードを売りつけようとするサイトの話。

4Dミートやら酸化防止剤やらで不安を煽り、最終的にモグワン、カナガンなどのドッグフードを勧めるものはもれなくアフィリエイト報酬…つまり金目的です。

■アフィリエイト報酬とは

アフィリエイトとはASP(アフィリエイト・サービス・プロバイダ)が提供するサービス。各メーカーがASPに登録している商品を自分のサイトやブログに貼った専用リンク(バナー)を経由して訪問者に買わせることで報酬が支払われるシステム。

記事の最後に特定の商品を紹介し「公式サイトはこちら」「〇〇の詳細を見てみる」などのリンクやボタンがある場合はほぼ100%アフィリエイト。

ASPに登録している数あるドッグフードの中でもモグワンやカナガンは報酬が高いため、どのサイトも必死になって紹介しているという背景があります。そしてそれらを売るために市販のドッグフードを過剰に叩くという行為が横行。

その際に便利なのがまさにここで取り上げる4Dミートなのです。

出所のしれない都市伝説をあたかも真実のように取り上げ、愛犬を大事にする飼い主を不安に陥れ、そして報酬が貰える高価なドッグフードに誘導する…これは多くのペット関連サイトで行われています。

4Dミートの良し悪しはさておき、ドッグフードを紹介しているサイトにおいて4Dミートがやたらと取り上げられる背景にはこういった事情があるということも知っておいてください。

4Dミートのまとめ

ネット上に溢れる4Dミートの情報。あたかも真実のように語られているものの、それらは都市伝説や噂の域を出ません。

存在や危険性の根拠に乏しいにもかかわらず高級なプレミアムドッグフードを売るために4Dミートを持ち出して他のドッグフードを乏している感が強い。個人的にはそういったサイトには辟易しています。

4Dミートはレンダリングされたミールや肉骨粉を指すというのであれば存在は確かですが、これらを危険というのもまた憶測。

多くの防腐剤が使用されている、病気を持っている、糞尿が多量に混入している…どれもこれもが素人の憶測なんですよね。仮にそれが真実だとして、どう危険なのかという客観的な根拠も存在しない。

逆に言えば、高級ドッグフードはどう安全なのか?安価なドッグフードを持ち出し「原材料表示を偽っても罰則がない」と勝手な憶測で批判するが、それはプレミアムドッグフードも同様ですよね。

高級だから原材料表示も正しいとでも言う気なのだろうか?値段が高いからヤバい肉を使うことはないとでも?船場吉兆の事件を忘れたか?4Dミートを批判しているサイトをよ~く見てみると様々な矛盾に気付くはず。

仮に4Dミートが存在するとして、それが100%安全と言い切るつもりはありません。しかしそれは高級なドッグフードも同様。規制の緩いドッグフードなんてものに頼っている時点でリスクは存在するのです。

愛犬に何を食べさせるか?それは飼い主の価値観に委ねられます。それはある意味で飼い主の自己満足でもあります。

少しでも良いものを食べさせたいと考えているのであればプレミアムドッグフードを与えればいい。エサなんて安いので構わないというのであれば安価なドッグフードで十分。どちらも間違ってはいないのです。

ただし、4Dミートの存在や危険性を謳った胡散臭い情報には惑わされてほしくないと感じます。この記事が客観的かつ冷静な判断によりご自分が納得できるフード選びの参考になれば幸いです。

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