ドッグフードの酸化防止剤は危険?安全?

ドッグフードの酸化防止剤は危険?

ドッグフードには必ず入っていると言っても過言ではない酸化防止剤。しかし一部の酸化防止剤は危険性を指摘する声が多く存在します。

特に危険とされているのがBHAやBHTといった化学的に合成した酸化防止剤。一説にはがんの原因になるとの話も。愛犬の健康に直結する問題だけに愛犬家にとっては非常に気になる問題ですよね。

とはいえこれら酸化防止剤は法律によって使用が認められているのも確か。本当に危険なのか?それともただ単に一部の飼い主や専門家などが過剰に反応しているだけなのか?

    目次
  1. ドッグフードに酸化防止剤を入れる理由
  2. 酸化防止剤の種類
    1. BHA(ブチルヒドロキシアニソール)
    2. BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)
    3. エトキシキン
    4. 没食子酸プロピル
    5. エリソルビン酸ナトリウム
    6. ビタミンC(アスコルビン酸)
    7. ミックストコフェロール
    8. ローズマリー抽出物(ハーブエキス)
    9. 緑茶抽出物
  3. 酸化防止剤は本当に危険なのか?
  4. 有害とされる酸化防止剤が使われているフード
  5. ドッグフードの酸化防止剤のまとめ

ドッグフードに酸化防止剤を入れる理由

市販のドッグフードには100%使用されている酸化防止剤。そもそもこれを配合する理由とはどういったものなのでしょうか?

例えば私たちが口にする加工食品のほとんどには保存料や防腐剤が使用されています。理由は簡単、それらを使わないとあっという間に痛んでしまうから。

それはドッグフードも同様。ましてやドッグフードは未開封で1~3年、開封後においても消費しきるまでに1ヶ月以上かかることも多いため、それなりの量の保存料が必要なのは想像に難くないですよね。

ドッグフードは犬にとって必要な栄養バランスで成り立っています。そうなると多くのたんぱく質や脂質が必要に。そのため肉類やミールに加え油脂類も多く配合されています。

特に油脂類は酸化しやすいこともあり、長期の保存に耐えるようにするためには添加物を使って酸化を抑える必要が。そこで登場するのが酸化防止剤なのです。

仮に酸化防止剤を使用しないとなると、ドッグフードの消費期限は極めて短期間になってしまいますし、劣化により愛犬の健康を害する可能性が高くなってしまうことでしょう。

酸化防止剤などの添加物は入っていないに越したことはないものの、現実的にはこれがないとドッグフードとして成り立ちません。いわば“必要悪”といったところでしょうか。

酸化防止剤の種類

酸化防止剤の種類

ドッグフードに使われる酸化防止剤と一口に言ってもその種類は様々。悪名高いBHAやBHT以外にも色々と存在するのです。

ドッグフードによく使用される酸化防止剤の種類と特徴、そして本当に危険なのかどうかを簡単に解説しましょう。

BHA(ブチルヒドロキシアニソール)

ドッグフードに使用される酸化防止剤としてやたらと叩かれる傾向にあるBHA(ブチルヒドロキシアニソール)。その理由はラットへの投与において発がん性が確認されたからに他なりません。

その発がん性ばかりがクローズアップされ「BHAは危険だ」とする意見がネットを中心に繰り広げられている状況にあります。

しかしこれは程度の問題。確かにBHAをラットに使用した結果前胃に対し発がん性が確認されているものの、その量は極めて高濃度。この濃度は環境省が定めるペットフードの添加物基準量150μg/gの約100倍に相当。

また、発がん性が認められたのは前胃のみ。しかし犬には前胃という臓器は存在しない点からもドッグフードに使用されるBHAで健康を害すことはないとされます。

ちなみにBHAは人間が口にする油脂やバター、魚介類の加工食品などにも使用されています。

BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)

BHAと並んで悪者扱いされる酸化防止剤がBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)。

BHAのように発がん性が確認されているわけではないものの、変異原性や催奇形性の疑いがあるとされます。また発がん性に対する疑いも根強く存在。

かつては人間が口にする油脂類や油脂を多く使用する食品にも使用されていましたが、現在はBHTを使用する食品はほとんどなくなっています。

そんな中ドッグフードの添加物として使用が認められていることから格好の餌食になっている印象も。

ドッグフードに使用できるBHTの量はBHAやエトキシキンとの計で150μg/g。安価なドッグフードに使用されているという印象。

エトキシキン

エトキシキンは安価かつ非常に強力な酸化防止剤とあって、飼料添加物として世界中で使用されています。しかしラットに対する投与試験では発がん性が認められるなど安全性に疑問を呈する声が多い成分でもあります。

そのため日本では人間の食品への添加は認められておらず、肉や魚などへの残留量も厳しく制限されています。

それに比べドッグフードへの含有量基準値は人間の75倍となる75ppm。飼料用の150ppmに比べれば半分ながら不安の残る数字といったところでしょうか。

ドッグフードの酸化防止剤として直接添加されていることは少ないものの、材料として使用されるミール類に含有している可能性が考えられます。

没食子酸プロピル

没食子酸プロピルは人間用のバターなど油脂類に使用されることがある酸化防止剤。

犬に対して投与した試験では毒性は認められませんでしたが、マウスやラットに対する高用量の投与では発がん性も。ただしこれは通常ではありえない量であるため毒性はほとんどないと考えられています。

ちなみに日本においてドッグフード用に対する基準値は定められていません。没食子酸プロピルを使用しているロイヤルカナンはヨーロッパの基準を守っているとのスタンスですが…

エリソルビン酸ナトリウム

エリソルビン酸ナトリウム(Na)はビタミンCであるアスコルビン酸の異性体。

合成添加物ながらラットやマウスを用いた試験において毒性はないと結論付けられており、人間用の肉や魚介類の加工品にも広く使用されています。

ビタミンC(アスコルビン酸)

抗酸化作用を持つビタミンC(アスコルビン酸)を酸化防止剤として使用することも。

酸化防止剤としてのみならず栄養面でも必須とあって毒性は一切なく、自然派のドッグフードに使用されることも。

ミックストコフェロール

トコフェロールとはビタミンEを指しており、ミックストコフェロールは下記4つを混合した酸化防止剤。

  • d-α-トコフェロール
  • d-β-トコフェロール
  • d-γ-トコフェロール
  • d-δ-トコフェロール

ビタミンEは抗酸化作用を持つ物質で、かつ天然成分ということもあり安全とされます。そのためドッグフードの酸化防止剤として広く使用されています。

原材料にはただ単に「ビタミンE」と書かれている場合も。

ローズマリー抽出物(ハーブエキス)

その名の通り抗酸化作用があるハーブ類から抽出したエキスで、ローズマリー抽出物などが代表的。天然成分で作られた酸化防止剤とあって安全性は高いと見ていいでしょう。

ハーブエキスはローズマリー抽出物をはじめ複数のエキスを配合したものと思われます。

緑茶抽出物

カテキンなど緑茶ポリフェノールによる酸化防止が期待できる緑茶抽出物。

トコフェロールやローズマリー抽出物同様天然成分であるため安全性が高く、一部のドッグフードに使用されています。

酸化防止剤は本当に危険なのか?

ドッグフードに使用される酸化防止剤の中で安全性に疑問があるとされるものはBHA、BHT、エトキシキン、没食子酸プロピルあたりになるでしょうか。

BHA、BHT、エトキシキンの3つに関しては環境省において基準の量が定められており、含有量はそれ以下に抑える必要があります。

また没食子酸プロピルを使用するロイヤルカナンはヨーロッパで製造されていることもあり、現地の使用基準が守られています。

これらの基準は動物実験に基づき害がないとされる量に抑えられているため、BHAやBHTを使用していたとしても愛犬の健康を害する可能性は低いと考えて差し支えないでしょう。

ただしこれらの基準は人間のものに対し数倍~数十倍とかなり緩めであるのも確か。そのためこういった酸化防止剤が気になるという飼い主さんの気持ちも理解できます。

高価なプレミアムドッグフードはもちろん安価な商品の中にもミックストコフェロールやローズマリー抽出物など天然由来の酸化防止剤を使用しているものは多く存在しています。

ドッグフードに使用されるBHAやBHTは安全とされる基準内に収まっているため基本的に害はありません。とはいえ気になる人は原材料を確認し、こういった酸化防止剤を使用していないドッグフードを選んだ方が良いのではないでしょうか。

有害とされる酸化防止剤が使われているフード

BHAやBHTが使われるドッグフード

BHAやBHT、エトキシキンといった有害性が疑われる酸化防止剤を使用したドッグフードにはどういった商品があるのかも紹介しておきましょう。

ドッグフード選びの参考にしていただければ幸いです。

商品/酸化防止剤 BHA BHT エトキシキン 没食子酸プロピル
ロイヤルカナン × ×
ベッツプラン × ×
プロマネージ × ×
ビルジャック × × ×
アイムス 〇※ 〇※ × ×
ペディグリー × ×

実を言うとBHAやBHTといった酸化防止剤を使用しているドッグフードって非常に少ないんですよね。ちなみにアイムスの「※」は商品によって使っているものと使っていないものが混在しているという意味になります。

エトキシキンにいたっては日本で販売している主要なドッグフードの中で使用しているものは見当たらず、没食子酸プロピルもロイヤルカナンのみ。

というか、高級ドッグフードの代表格であり動物病院などでも積極的に販売されるロイヤルカナンがBHAや没食子酸プロピルを使用しているというのはちょっと驚きですよね。

同じくロイヤルカナン社が販売するベッツプランも同様にBHAと没食子酸プロピルが使用されています。

まあ、安全性に問題がないということの裏返しなのかもしれませんが…

現在ロイヤルカナン社が販売するユーカヌバというドッグフードはBHAと没食子酸プロピルが使用されていましたが、2018年のリニューアルによりミックストコフェロールとローズマリーエキスに変更されています。

このことから近い将来ロイヤルカナンも変更になるかもしれませんね。

ドッグフードの酸化防止剤のまとめ

ドライのドッグフードは長期保存が前提とあって必ず酸化防止剤が使用されています。しかしBHAやBHTなど一部の成分には発がん性が疑われるためこれを忌避したいと考える飼い主さんが多いのも事実。

とはいえ愛犬ブームや犬に対する健康意識の高まりにより危険とされる酸化防止剤を使用している商品は少なくなっています。現在は安価なドッグフードにおいてもBHAやBHTが使用されているものはほとんどありません。

安価なドッグフードの代表格であるビタワンや愛犬元気ですらミックストコフェロールやローズマリー抽出物が使用されているのですから、危険とされる酸化防止剤を避けることは容易であるはず。

ただし、ここまで何度か書いているようにBHAやBHTの含有量は環境省により明確に定められています。その量は発がん性が確認された量の100分の1程度であるため、仮にこれらが使われていたとしても安全と考えるのが自然。

ネット上のドッグフード紹介サイトや犬の情報サイトはこういった酸化防止剤の不安を煽り、紹介することで利益に繋がるドッグフードをおすすめするという手法が横行しているため、過剰に叩かれているという側面も。

BHAやBHTがどうしても不安というのであれば精神衛生上そういったフードは避けるべきと考えますが、個人的には過剰反応なのかなと感じています。

あわせて読みたい関連記事

カテゴリ一覧