犬の白内障とは?人間とは違う原因も
愛犬の加齢とともに徐々に目が白く濁ってきたと感じることはありませんか?目の白濁が角膜炎など一過性のものでない場合は白内障の可能性が高いといえるでしょう。
人間でも高齢になってくるとよく耳にする白内障。犬も同様に多く見られる病ですが、人間とは違う原因であることも。
最悪の場合失明に至ることもある白内障。私たち飼い主が気付いた時はどういった対処が必要なのか?治療法や原因、症状なども併せて伝えていきたいと思います。
白内障とはどういう病気なのか?
犬に多く見られる白内障とは、眼球の中でレンズの役割を果たす水晶体が白く濁ってしまう病気。
目に入ってくる光は水晶体を通り網膜が光や色、形などを感知します。しかしレンズの役割をする水晶体が濁ってしまうと入ってくる光が減衰したり拡散したりして見えにくくなってくるのです。当然ながら視力も落ちます。
人間の場合は老齢になってから白内障になるケースが圧倒的に多くなっているのに対し、犬は1歳前後で発症する若年性白内障もかなりの割合を占めるという特徴があります。
犬の白内障の原因
犬が白内障に罹る原因…その多くは遺伝性のものになります。
白内障といえば加齢によって引き起こされる印象が強い病気ながら、犬の場合は遺伝が主な要因であるため若い犬にも見られるのです。
とはいえ、加齢による白内障も多く存在します。白内障の原因は遺伝のほか糖尿病やクッシング症候群、紫外線など様々なものが絡むため、年齢を重ねれば重ねるほど発症しやすいのは人間と同様。
後発犬種は?
遺伝による発症が多い犬の白内障では“なりやすい犬種”というものが存在します。主な犬種は以下の通り。
- シー・ズー
- マルチーズ
- 柴犬
- プードル
- シベリアン・ハスキー
- ミニチュア・シュナウザー
- ボストン・テリア
- アメリカン・コッカー・スパニエル
…シー・ズーって何気に様々な病気にかかりやすいですね…
一応上記犬種は白内障にかかりやすいとされていますが、一方で多くの犬種で確認されているため「この犬なら大丈夫」ということはありません。
「なんとなく目が白いな」と感じたらすぐに動物病院へ。
白内障の主な症状
白内障は初期の段階では自覚症状に乏しく、目の白濁もうっすらであるため飼い主の側からしても気付きにくいという特徴があります。
しかし目の濁りが悪化するにしたがって徐々に症状が表面化してきます。
- 目が白くなる
- 壁や物によくぶつかる
- 臆病になる
飼い主から見てもっとも分かりやすいのは目の白濁。
また犬にとっては周囲が見えづらくなることから、物や壁などにぶつかったり物音に敏感に反応するように。なんとなく行動がおぼつかないなと感じた場合は白内障を含め目の病気を疑ってみたほうがいいでしょう。
白内障の治療法
白内障の治療は大きく分けて2つ。点眼薬や内服薬を用いた内科的な治療と、手術を要する外科的な治療になります。
とはいえ白内障は点眼薬などの内科的な治療で改善することはありません。あくまでも進行を遅らせることを目的とした対症療法になるため、根本的な解決を望むなら外科的な治療しか選択肢がないのが実情。
どんな手術を行う?
白内障は一度発症してしまうと内科的な措置で改善することはできません。そのため視力を回復させるには人間の白内障と同様に水晶体を人工レンズに置き換える手術が必要になります。
主な手順は以下の通り。
この手術を行うことで多くの場合視力は劇的に改善します。
ただし、手術が終わればメンテナンスフリー…というわけではなく、炎症や眼圧が安定するまで1~2ヶ月ほどは点眼薬や内服薬を使用する必要があります。それらが安定してはじめて普段通りの生活に戻ることができるのです。
ちなみに人工レンズに置き換える白内障手術の費用は、動物病院によって差はあるものの片目でおおよそ20~30万円となります。
両目の手術を行い、投薬や入院費用諸々を考えると50~80万円くらいの出費は覚悟しておく必要があるでしょう。人間の白内障手術と比べ高額と言わざるを得ません。
高齢になったからの白内障の場合進行が遅くなる傾向にあるため、余命や費用のことも考慮すれば内服薬や点眼薬によって進行を遅らせるという方法が現実的なのかもしれません。
犬の白内障は予防できるのか?
犬の白内障は失明の恐れがあり、かつ手術となると高額な費用が必要ということもあり、可能であれば予防を心がけたいところですよね。
しかし現実的には予防は難しいと言わざるを得ません。
というのも、犬の白内障の原因の多くは遺伝性。当然ながら人間がどうこうできる問題ではありません。後天的な白内障においても様々な要因が重なって発症するため、予防は難しいというのが実情です。
ただし、白内障の要因には紫外線や糖尿病、外傷など人間がある程度管理できるものも存在します。帽子やサングラスを使用したり食事を気を付けたりすることで多少の予防効果は期待できるかもしれません。
また、効果のほどは定かではありませんが、犬の目の健康維持に役立つとされるサプリメントも販売されています。気休め程度でしょうがそういった商品を使用するという方法も。
…本当に気休めですけどね。
犬の白内障のまとめ
犬の白内障は一度発症してしまうと手術以外の改善法は存在しません。それだけに予防に力を入れたい…と考えても遺伝性のものが多いことから限界があります。
しかも手術費用は高額。飼い主にとっては非常に悩ましい病気といえるでしょう。
視力の回復を第一に考えるのであれば手術を行うのがベストではあるものの、全身麻酔が必要になるなどリスクも伴います。もし愛犬が高齢なのであれば手術に耐えられない可能性も。
犬は人間ほど視力に頼っている動物ではないことから、あえて手術を行わずこれまで以上に愛情を注いてあげるという選択肢もあると考えます。
万が一愛犬が白内障になってしまった場合は、年齢や経済的負担、愛犬にとって何が幸せなのかを今一度考える必要があるかと。
ただし、どういった選択を行うにせよ白内障の兆候が見られたら早急に動物病院に連れていくようにしましょう。
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