犬用のサプリメントって本当に効果あるの?
「愛犬には栄養バランスが良いはずのドッグフードを食べさせているけど、なんか体調が悪そう」「少しでも長く健康でいて欲しい」。そんな時に思い浮かぶ存在といえば犬用のサプリメントではないでしょうか。
近年はペットブームということに加え、「犬は家族」という意識が強くなった結果愛犬の健康に敏感な飼い主さんが増えています。それに伴って続々と登場しているのが犬用のサプリメント。
健康志向の人がサプリメントを使用するのと同様に、愛犬の健康を維持するためにサプリメントの使用を考えている飼い主さんは多いと思いますが、気になるのは「本当に効くの?」という点。
メーカーの謳い文句だけを見ればすごく効果がありそうですが…様々な種類が存在する犬用サプリメントは本当に効果があるのか、客観的な視点から厳しく切り込んでみたいと思います。
犬用サプリメントの定義
犬用サプリメントって本来どういったものかご存知ですか?
人間用のものにも言えることとして、サプリメントというものは不足する栄養もしくは狙った栄養素を摂取するもの。
「関節痛を和らげたいなら〇〇」「□□は皮膚疾患に良い」「△△を飲ませたらがんが治った」なんて話をよく耳にしますよね。しかしサプリメントというのは基本的に病気の治療に役立つものではありません。
それはサプリメントの性格を考えれば分かると思います。主に病院で処方される医薬品はおろか薬局などで買える医薬部外品ですらないサプリメントはあくまでも栄養補助・健康補助食品なのです。
まして犬用のサプリメントとなれば私たち人間用のサプリメントと違い「食品」ですらありません。ただの「動物用雑貨」という位置付けに。
そういった性格の商品であるため内容物や成分含有量についてどこかの機関が検査するようなことはありません。つまり犬用サプリメントの質や成分含有量、内容物はメーカーの良心に委ねられていると言っても過言ではないのです。
だからといって「作用や効果が期待できない」と言っているわけではありません。立ち位置として「栄養補助食品」や「動物用雑貨」であるという事実は揺るがないということを知ってほしいのです。
そのため犬用サプリメントを探す際はメーカーや商品選びが何より重要になってきます。
どんな症状に効果があるの?
犬用のサプリメントは薬機法により病気や疾患への効果・効能を謳うことはできないものの、私たちが必要としている情報はまさに“それ”なんですよね。
どんな成分がどういった病気のサポートになるのか、どんな栄養を補給すればどういった影響があるのかについて、症状別に解説していきたいと思います。
関節の症状
人間同様犬も加齢とともに関節の軟骨がすり減り痛みが出てくるもの。場合によっては歩けなくなってしまうケースもあります。
そんな関節の痛みや予防、保護には軟骨の成分であるグルコサミンやコンドロイチンの栄養補給がベストとされます。併せて人体に欠かせないたんぱく質であるコラーゲンもしっかりと摂取しておきたいところ。
ただし、人間においても大人気商品であるグルコサミンやコンドロイチンに関しては賛否入り乱れており、「効く」という意見と「効かない」という意見が真っ向対立しています。それは犬用でも同様。(詳細は後述)
皮膚疾患
多くの犬が悩まされている皮膚疾患に対する栄養補給の基本はビタミンです。
細胞分裂や増殖などに関わるビタミンAやビタミンBをはじめ、皮膚のコラーゲン・エラスチン生成や抗酸化作用があるビタミンC、同じく抗酸化作用があり毛の健康にも影響するビタミンEなど。
ミネラルである亜鉛も重要。亜鉛が欠乏すると皮膚疾患になりやすいことが知られ、特に犬に多いアトピー性皮膚炎は亜鉛の補充が効果的。
また魚の脂に多く含まれるオメガ3脂肪酸のDHAやEPAも良いとされます。
目の疾患
高齢犬ともなると目が白く濁る白内障や失明に繋がる緑内障になるケースが増えてきます。そんな目の異常に効果的とされるのがブルーベリーやビルベリーに含まれるアントシアニン。
また、目の網膜の中央にある黄斑はルテインが存在。そのルテインを補うことで網膜を保護できます。強力な抗酸化作用を持つアスタキサンチンが眼精疲労や目のダメージに効果的という説も。
犬用サプリメントに過信は禁物
様々な症状や疾患に効果があるとされるサプリメント。一方で否定的な意見も非常に多いという現実も。
サプリメントに使用される成分にはマウスに対する試験やヒトに対する臨床試験などを行い、一定の効果を上げているものも存在します。しかし「有意な効果はなかった」とするデータが多いのも特徴。
例えばグルコサミンとコンドロイチン。犬はもちろん人間の関節痛に対する定番のサプリメントですよね。これらに関しコラーゲンと共に犬に経口摂取させたところ多くの犬の痛みや炎症が改善されたというデータが存在します。
一方でヒトに対する大規模な臨床試験において、グルコサミンとコンドロイチンによって関節痛が改善することはないという結論に達したものが多数存在。現在はひざ関節痛には効かないという意見が優勢。
ブルーベリーやビルベリーに含まれるアントシアニンについても同様。目に対する効果が確認された試験結果もあれば、否定されたものも存在しているのです。
結局サプリメントはエビデンス(科学的根拠)に乏しいということ。複数の大規模な臨床試験によって確かな効果が実証されていれば健康補助食品ではなく医薬品として認められていることでしょう。
人間であれば「効果的とされるサプリメントを飲んだ」という思い込みから効果を実感することもあるかもしれません。いわゆるプラセボ効果(プラシーボ効果)というやつですね。
しかしそういった先入観がない犬にとってサプリメントはほとんど無意味という見方もできます。結局は飼い主の自己満足なのかもしれません。
とはいえ、完全に効果が否定されているわけではため判断が難しい。前述した犬に対するコラーゲンやグルコサミン、コンドロイチンのデータも存在しますしね。
犬用サプリメントは効果に対する科学的根拠に乏しいため過信は禁物であることに間違いはありませんが、だからといって効果を否定するほどの根拠に乏しいのもまた事実。
少しでも良い影響があるのであれば飲ませてみたいと考えるのが飼い主の愛情でもあるんですよね。
成分含有量が分からない問題
犬用サプリメントの使用を検討するケースというのは、飼い主さんが何らかの症状に気付き、それに対して効果的とされる栄養素を補う目的になりますよね。実際どういった成分が配合されているか確認するはずです。
その際、成分含有量は確認していますか?
人間用にしろ犬用にしろ、日本のサプリメントというのは成分含有量を明記しない商品が多かったりします。特にネットを中心に販売されているものはそれが顕著。しかも無駄に高価というおまけつき。
一方でDHCやネイチャーメイドなど安価かつ有名なものはほとんどが成分含有量を明記しています。100円均一であるダイソーやキャンドゥにあるサプリメントですら含有量を明記している。
にもかかわらずネットを中心に販売されている犬用サプリメントというのは、入っている成分は大々的に宣伝していてもその含有量にはだんまり。
それでなくても効果が不透明な犬用サプリメントにおいて成分含有量が分からないといのはあまりにも不親切。
例えば前述した犬の関節痛に対するコラーゲンやグルコサミン、コンドロイチンを用いた海外の試験。ここでは1日に非変性Ⅱ型コラーゲン10mg、グルコサミン2000mg、コンドロイチン1600mgが投与されています。
この量、人間用のサプリメントと比べてもかなりの高用量となっています。犬の大きさや体重が分からないため何とも言えませんが、小型犬であればこれの5分の1~10分の1でも十分なはず。
これほどの用量は必要ないにしろ、しっかりと含有量を明記してもらわないことには効果の程度を推し量ることもできない。極端な話、1mgでも入っていれば「配合した」と謳えるわけですから。
一方でアメリカなど海外のサプリメントはほぼ確実に含有量表記しています。アメリカはサプリメント大国とあってそのあたりに敏感な国民性なのか、それとも法的に明記が義務付けられているのか…
そういった点において、もし愛犬にサプリメントを飲ませたいと考えているのであれば、アメリカ製なども視野に入れて欲しいと感じます。あっちのほうが健康食品の法整備に関しては厳しいですしね。
効果に関しては賛否あるサプリメントですが、上手に活用すればメリットが享受できると考えています。しかしそれは成分含有量を把握しての話。
個人的には成分含有量を公表していない、主にネット上で売られる日本の犬用サプリメントは信用に値しないと考えております。高いのに含有量すら表示できないとか、消費者を馬鹿にしている印象しか受けない。
犬用サプリメントは効く?効かない?
犬用サプリメントに関して、否定的なことに加え肯定的なことを書いてきましたが、結局のところ犬の病気や症状に効果があるのでしょうか?
結論としてはサプリメントには効果があるともないとも言い切れない…という玉虫色の答えになってしまうでしょうか。
効果があるというだけの科学的根拠に乏しいのがその最たる理由。そもそも栄養バランスが取れた総合栄養食であるドッグフードを食べている犬に果たしてサプリメントが必要なのかという疑問も湧きます。
とはいえどんなプレミアムフードでも配合されている栄養素に限りがあります。病状や症状にあわせサプリメントで特定の成分を補充するというのは理にかなっており、プラスになることはあってもマイナスになることはないでしょう。
ただしそれは成分の含有量を把握するのが前提。主要な成分の含有量すら明記できないサプリメントは信用に値しません。
必要十分な量を配合しているならむしろ堂々と表示するでしょうからね。それができないということは…お察しください。
様々な試験が行われている人間用の商品ですら賛否あるサプリメント。犬用ともなれば影響や効果を検証した試験を行っているものは限られてきます。
あえて言うなら関節に関してのグルコサミンやコンドロイチン、コラーゲンの効果には多少の根拠があるのかな…というレベル。「効いたら儲けもの」くらいの感覚で使用するのがベストなのではないでしょうか。
犬用サプリメントに効果を期待するなら、主要な成分の含有量を明記しているものを選ぶようにしてください。効く効かないはそれからの話。それがサプリメントの最低条件と言えるでしょう。
あわせて読みたい関連記事
犬用サプリメントとして最も有名なアンチノール。抗炎症作用があり関節痛や心疾患、皮膚炎に効果的とされます。しかししょせんはサプリメント。愛犬にアンチノールを飲ませた結果特に効果を実感することはありませんでした…続きを読む
近年はペットブームと言われるだけあって愛犬を溺愛する人が増え、それに伴って様々なサプリメントが登場しています。しかしちょっと待って、犬のサプリメントって本当に効果があるの?効かないサプリメントの特徴とは…続きを読む
人間にとって体にいい納豆。実は犬にとっても栄養食になるのです。タンパク質やナットウキナーゼ、ミネラルなど多くの栄養をを含む納豆は愛犬の健康に寄与してくれるでしょう。しかし食べさせ方には注意が必要。調味料や薬味はNGです…続きを読む
人間であれば食べても問題ない食べ物でも犬が食べると毒になるものが存在し、チョコレートもそのひとつ。具体的にどの程度の量を食べると中毒症状を呈するのか?問題にならない量や飼い主ができる対処法などを詳しく見ていきましょう…続きを読む
料理に使っても薬味に使っても非常に美味しいネギ。人間にとっては健康効果も期待できますが、犬にとっては有害な食べ物だったりします。万が一愛犬がネギを口にしてしまった場合の症状や対処法とはどういったものなのか…続きを読む
様々な料理に使用する玉ねぎですが、犬にとっては中毒症状を引き起こす非常に危険な存在です。どの程度の量を食べると中毒が起きるのか?また致死量は?万が一食べてしまった際の対処法や玉ねぎ料理の注意点など気になる点を解説していきます…続きを読む
ドッグフードが無くなったから代わりにキャットフードを与えた、犬が猫のエサを横取りして食べてしまった…そんな経験はありませんか?一見して大きな違いはないため犬がキャットフードを食べても問題なさそうに感じますが、実際はどうなのか…続きを読む
犬が体を掻いている…極めて日常的な風景といえます。しかしそれも程度の問題。同じ場所ばかりを舐めたり噛んだりしている、長時間掻き続けているといった場合は皮膚のトラブルが考えられます。どんな原因や対処法が考えられるのでしょうか…続きを読む
人間に比べ犬は比較的よく吐く動物です。そのため愛犬が嘔吐しても「ああ、また吐いてる」と気にも留めない飼い主さんもいるかもしれません。確かに問題ないことが多いのも事実ですが、中には重大な病気が隠れているケースも…続きを読む
犬の寄生虫といえば蚊が媒介するフィラリアが広く知られています。しかし犬に寄生する虫はフィラリアだけに留まらず様々な種類が存在、愛犬の命を脅かします。寄生虫にはどういった種類があり、どういう対策が必要なのでしょうか…続きを読む
いつの間にか愛犬にくっついて吸血しているマダニ。血を吸われるだけならまだしも、様々な感染症を引き起こす厄介な存在です。マダニが媒介する感染症の種類や人間への影響、付着してしまった際の対処法・予防法まで詳しく紹介します…続きを読む
愛犬のアトピー性皮膚炎は見ていて非常に辛いもの。難治性の病気でもあるアトピー性皮膚炎の完治は困難ながら、症状を抑える方法は様々存在します。どういった原因で発症しどういう対処法・治療法があるのか詳しく紹介します…続きを読む
犬の皮膚トラブルの中でも最も多いもののひとつである膿皮症。治療法はある程度確立されているものの、近年は耐性菌によって治療が困難になる場合も。アトピー性皮膚炎との併発も多く決して油断できません。その原因と治療法とは?…続きを読む