犬の口臭が気になる!原因と対策は?
愛犬が飼い主の顔を舐める…愛犬家であれば極めて日常的なコミュニケーションであり、また犬の愛情を感じられる瞬間でもあります。
…が、口が臭い。
顔を舐められて嬉しいはずなのに愛犬の口臭が気になり微妙な気分に。そもそも犬の口臭って問題ないの?
結論から言えば何かしら問題を抱えていると思った方がいいでしょう。犬の口が臭う原因と対処法について解説していきます。
犬の口臭の原因は胃腸の不調?
犬に限らず人間にも言えることですが、口臭の原因を胃腸の不調だと思っている人って多いですよね。口が臭い人を見ると「あの人胃が悪いのかな?」なんて話をしてみたり…
しかしそれ、ほとんどの場合勘違いです。もちろん犬の口臭も同様。
犬や人間などの動物は胃と食道の間に蓋となる「噴門」が存在します。これが胃の内容物や臭いの逆流やを防止するため、基本的に胃から臭いが上がってくるということはないのです。
逆流性食道炎や何らかの疾患により噴門がうまく閉じないケースもありますが、胃の内容物の臭いなどが口臭に混ざることはほとんどないと考えて差し支えありません。
稀に重度の糖尿病や肺の腫瘍、腎臓や肝臓の異常により臭いが発生することがあります。しかしそれはあくまでも“稀”な例ということを覚えておいてください。
口臭のほとんどは口腔環境にあり
じゃあ犬の口臭は何が原因なのか?これは人間同様ほとんどのケースにおいて口腔環境に何らかの問題が潜んでいると考えていいでしょう。
その最たるものは歯槽膿漏などの歯周病。
言うまでもなく犬は人間のように歯を磨くことができません。ご飯を食べることにより歯の周りに歯垢や食べかすが付着してもそれを自力で取り除くことはできないため、それが歯石となり歯周ポケットに蓄積、それが原因で歯肉が炎症を起こしてきます。
それが悪化すると膿が発生。これが強烈な臭いの原因に。またちょっとしたことですぐに歯茎から出血するようになることから鉄っぽい臭いが発生することも。
「ドブ臭い」「腐敗臭」といった口臭のほとんどはこういった口内環境の問題が原因となって引き起こされるのです。
愛犬の口臭を改善する方法
犬の口臭の原因のほとんどは口内環境にあり…であれば口臭を改善させる方法というのは限られてきます。そう、歯周病の予防や治療です。
私たち飼い主ができる方法としては主に以下の3つ。
- 飼い主が犬の歯磨きを行う
- 飼い主が犬の歯石取りを行う
- 動物病院に連れていく
ひとつずつ詳しく見ていきましょう。
飼い主が犬の歯磨きを行う
すでに付着してしまった硬い歯石に関しては飼い主が除去するのは難しいものの、飼い主が愛犬の歯磨きを行う音でこれ以上の歯石や歯垢の付着を予防し歯周病の悪化を防ぐことができます。
可能であれば愛犬が子供の頃から行い、歯磨きに慣れさせると共に口腔ケアをしっかりと行うべき。それにより口臭の原因となる歯周病の発症を防ぐことができるでしょう。
使用する歯ブラシは犬用のものでも人間用のものでも構いません。ただし毛が硬いものは避けできるだけヘッドが小さいものが理想的。小回りが利き1本1本丁寧に磨くという点からも子供用やコンパクトヘッドのものを選びましょう。
方法は人間と同様に歯茎と歯の境目に対し歯ブラシを45度の角度で当て小刻みに横に動かすのが基本。慣れないうちはすべてを磨こうとせず短時間で切り上げ、慣れると共に徐々に時間をかけるようにします。
注意点としては力を入れて磨かないこと。人間でもガシガシと力を入れて歯を磨く人がいますが、これでは歯茎が傷ついてしまううえに毛先が広がってしまい思うように歯垢を落とすことができません。
歯磨きの頻度については、理想をいえば毎食後。朝晩2回ご飯を食べるのであれば、その後に行うことで歯石の元となる歯垢の付着を防ぐことができます。
ただ、朝は色々と忙しく犬の歯磨きを行う暇がないという人も多いことでしょう。そういった場合は飼い主が寝る前に行うようにしてください。寝ている間に歯周病菌が繁殖するのを防ぐことができます。
飼い主が犬の歯石取りを行う
歯磨きによる歯周病の予防だけではなく、飼い主自身が口臭の原因となる歯周病を積極的に治すために行うのが愛犬の歯石取り。
犬の歯石取りに使用する器具は「スケーラー」と呼ばれるもの。人間の歯医者などでも目にする器具で、先が尖ったもの、平たいものが存在します。
この器具を使って犬の歯に付着した歯垢や歯石を除去していきます。歯医者はもちろん獣医師が犬や猫の歯石を取り除く際にも使用する一般的な歯石除去法ですね。
ただし、獣医師の多くは全身麻酔により犬を動けなくしたうえで安全に歯石を除去するのに対し、飼い主が行う場合は動こうとする犬に注意を払いながら行う必要が。当然ながら器具が歯茎を傷つけるリスクが存在することに。
歯周病を引き起こす歯石や歯垢というのは歯と歯茎の境目や歯周ポケット内に存在します。歯茎と歯の際にある歯石をスケーラーにより削り取る必要があるため、犬に動かれると危険なのです。
実際に歯医者で歯石取りを行ったことがある人であれば分かると思いますが、歯茎と歯の間を掃除する歯石取りには痛みが伴う場合も。仮に歯磨きになれた犬でもその痛みや違和感で動いてしまう可能性が高いといえます。
とはいえ、飼い主自身が歯石を取りを行うことができればこれほど理想的なことはありません。全身麻酔によるリスクや高額な費用からも解放されますからね。
まずは歯磨きに慣れさせ、かつ自分で愛犬の歯石を取りたいという人は、スケーラーを購入し一度チャレンジしてみてはいかがでしょうか。もちろんリスクについて十分考慮する必要がありますが。
動物病院で歯石を取ってもらう
犬の口臭を防ぐ最終手段は動物病院にて獣医師に歯石を除去してもらう方法。
安全に歯石を除去するため全身麻酔下で行うのが一般的で、飼い主が行う歯石取りに比べより確実かつ安全に除去できるのが大きなメリット。
しかし犬の全身麻酔にはリスクが付きまといます。全身麻酔が直接的な死因となる死亡率は犬の場合およそ0.2%。500匹に1匹が死ぬ計算になります。この数字を高いと見るか低いと見るかは各々の判断に委ねます。
また、ブルドッグやフレンチ・ブルドッグ、シー・ズー、パグなどの短頭種の場合リスクが高まることが知られています。全身麻酔をするということはこういったリスクも考慮する必要があるのです。
とはいえ愛犬の歯の健康を維持し、かつ口臭を改善させるには歯石を除去し歯周病を治す以外に方法はありません。動物病院にて歯石の除去をする場合は、信頼できる獣医師にお願いするようにしましょう。
ちなみに動物病院での歯石の除去にかかる費用は、全身麻酔などすべてをひっくるめて2~5万円というのが一般的な相場。動物病院ごとに個別に設定している料金体系のほか、犬の大きさや歯石付着の程度により料金は変わってきます。
口臭改善にサプリやフードって意味あるの?
ネットなどで犬の口臭について調べていると、「口臭にはこのサプリメントがおすすめ」「このフードを食べると口内環境や腸内環境が良くなり口臭が改善する」的な文言を見かけることってありませんか?
正直なところ、エサやサプリメントで犬の口臭が改善することってあるのでしょうか? 結論から言うと「信じないほうがいい」となります。
前述の通り犬の口臭の原因のほとんどは口内環境…中でも歯周病が大きな割合を占めます。そしてその歯周病は炎症を引き起こしている歯石を除去しない限り治ることはありません。つまり食べ物でどうにかなる問題ではない。
そもそも、胃や肝臓、腎臓など内臓の疾患による口臭はかなり重度にならないと表面化しません。そんな状況がサプリメントやドッグフードで改善するはずがないのです。
ただし、柔らかい缶詰などのフードよりはカリカリのドライフードの方が歯垢が付着しにくい傾向も。堅い分歯に付着した歯垢を削り取りやすいからです。同様の理由で犬用ガムや牛の爪などでも歯垢除去が期待できます。
とはいえ堅いフードやおやつで除去できるのは歯垢まで。固まってしまった歯石を取ることはできません。
食べ物全般で犬の口臭が改善できるとは思わないようにしてください。
犬の口臭についてのまとめ
人間が「30代の8割が歯周病」といわれるように、3歳以上の犬の約8割が歯周病になっているとされます。つまり3歳以上になると口臭がきつくなる傾向にあると見ていいでしょう。
犬の口臭の原因の大半を占める歯周病、歯石の除去などの対策を行わなければ悪化する一方。そういったことから年齢が上がれば上がるほど口臭が表面化しやすいと思って間違いありません。
それを防ぐ、改善するには飼い主の意識が重要になります。
毎日の歯磨きはもちろん、歯磨きでは取りきれない歯垢や歯石は何らかの方法で除去することが望ましいのは言うまでもありません。ただし動物病院では全身麻酔が必要になるためリスクの想定も必要に。
極論で言えば犬は歯周病により歯が全部抜け落ちてしまったとしてもドッグフードであれば十分食べることができます。しかし歯周病は糖尿病や心疾患など全身に悪影響を及ぼす点も忘れてはなりません。
口臭のみならず愛犬の健康を考えるのであれば飼い主による積極的な口腔ケアは避けて通れないでしょう。
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