犬に穀物を食べさせても大丈夫なのか?
愛犬には少しでも良いものを食べさせたい…そう考えてドッグフードを調べてみると「犬にとって穀物(穀類)は危険である」「犬は穀物を消化できない」といった文言がやたらと目に付きます。
そしてそういったサイトは必ずと言っていいほど「安価なドッグフードは食べさせるべきではない」というスタンスをとっており、穀物不使用のプレミアムドッグフードを猛プッシュしてきます。
しかし昔は犬に白米やパンを与えるなんて日常茶飯事でしたし、それによって大きな問題が発生したという話も聞いたことがありません。
本当に犬にとって穀物は食べさせるべきではないのか?穀物入りのドッグフードは避けるべきなのか?これらの問題に対しデータや根拠をもとに紐解いていきたいと思います。
犬に穀物を食べさせるべきではないとする理由
様々なドッグフードをレビュー・紹介しているサイトで特に見かける記述として「犬に穀物(穀類)を食べさせるべきではない」というものがありますよね。だからこそ穀物を使わず肉をメインとした高級ドッグフードを与えようと。
そもそも穀物を犬に食べさせてはいけない理由とはなんなのでしょう?
その理由として挙げられているのが「犬は肉食だから」というもの。犬の祖先であるオオカミは肉食であり、それを受け継いでいる犬もまた肉食であるため、穀物を分解する酵素が非常に少ないのだと。
確かにもっともらしい理由です。
実際、歯の形状や腸の長さから見るにオオカミは肉食。穀物を分解する酵素が少なく体の仕組みも肉食というのであれば、その遺伝子を色濃く残す犬もまた同様の性質を持っているということに。
であるなら、穀物を多く配合する安価なドッグフードを食べさせるべきではないという意見も納得できます。
犬は雑食だという事実
しかしこれはあくまでも高いドッグフードを買わせたい側の意見に過ぎません。
歯の形状や腸の長さから考えるとオオカミは基本的に肉食動物ですが、実際は肉食がメインの雑食だとされます。獲物がいれば積極的に肉を食べる一方、獲物が取れない時は植物や果物で飢えをしのぐこともあるからです。
オオカミが北半球に広く分布できている理由にはこの雑食性が影響しているという説も。オオカミは肉食で穀物はほとんど消化・分解できないという話は鵜呑みにしないようにしてください。
犬は穀物を消化できる
肉食寄りの雑食であるオオカミを祖先に持つ犬もまた同様の性質を持っています。しかし犬は1万年以上にわたって人間と暮らしていく中で雑食性がより強くなっています。
実際、犬はオオカミに比べでんぷんの消化に優れていると遺伝的に特定されています。また腸の長さもオオカミに比べ長くなっており、植物や穀物により適応した体になっているのです。
かつての日本ではみそ汁をぶっかけたご飯が当たり前のように犬に与えられていました。つまりたんぱく質はほとんど期待できない食事です。しかもフィラリアなどのリスクに晒される外飼いで。
それでも平均寿命は10歳ほどだったのですから、犬に穀物を与えるべきではないという論調はあまりにも乱暴。穀物ばかりでは健康に悪いのは間違いないでしょうが、穀物でも十分生きていけるのもまた事実。
まして安価なドッグフードでも肉類や野菜類もしっかり入っているのですから、昔の犬の食事に比べればはるかにバランスが取れています。
穀物によるアレルギーが怖いという嘘
肉を主体とした高価なドッグフードを売りたがるサイトによく見られる記述として「小麦やトウモロコシがアレルゲンになる」というものがあります。だから穀物ではなく肉のみを使ったフードがおすすめだと。
しかしこれは詭弁です。完全な情報操作というかステマというか…この文言だけ見ると穀物に対するアレルギーが非常に多いように感じますよね。
人間と同様に犬も様々な食品に対しアレルギーを発症することがあります。その中にはもちろん小麦やトウモロコシ、米なども含まれています。しかしその割合を見てみると…
牛肉や乳製品、鶏肉といった動物性のものが圧倒的に多いのです。
ある程度高価なドッグフードになるとチキンをメインにしたものが多くなりますが、それでもアレルギーを起こす割合は小麦より高い。
こういったドッグフードを勧めながら穀物のアレルギーを批判するというのは正直言って悪意しか感じません。高い報酬を受け取れるドッグフードを売りたいがために他の商品を乏しているにすぎないのです。
ドッグフードに穀物が入っていても大丈夫
本来肉食寄りの雑食であるオオカミを祖先に持つ犬は、長きにわたって人間共に暮らす中でさらに雑食性を強めており、穀物を栄養として取り込めることに疑う余地はありません。
そのため穀物(穀類)を使用しているドッグフードを食べさせることに関しても全く問題がないといっていいでしょう。栄養バランスという観点において穀物を使用しない高級ドッグフードより良いという考え方も。
ただし、それはあくまでも素材の面での話。穀物を主に配合している安価なドッグフードは添加物や酸化防止剤、着色料などを使用しているという問題も。
これらが犬の健康にどの程度影響があるのかは未知数ながら、こういった物質は使用しないに越したことがないのも確か。そういった面においてこれらを使用しない高級ドッグフードが優れているのは否めません。
まあ、だからこそのプレミアムドッグフードなわけですしね。
私自身は安価なドッグフードを過剰に叩くつもりも、高級ドッグフードを持ち上げるつもりもありません。少なくともドッグフードに配合される穀物に関しては問題ないというスタンスです。
1つ確実に言えることは、モグワンやカナガンといったプレミアムドッグフードを猛プッシュしているサイトの情報は鵜呑みににすべきでないということ。
これらが良いフードであることは確かなのでしょうが、だからといって根拠のない情報で穀物を叩くのは筋違い。安価なドッグフードに対する情報も推測ばかりで過剰に批判しているため信用に値しません。
犬は安価なドッグフードに使われる穀物(穀類)を栄養として分解・吸収することができます。穀物が害になるようなことはないので安心してください。
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